1月17日封切りは、誰もが知るような大作はないものの、観たい作品が目白押し。
もともと、この日は映画を観るためだけに仕事を休みにしていたところ、観たい三本の作品が数十分のインターバルで上映されていたため、クルマで片道約一時間半かけて、日本で最大数のスクリーン(18スクリーン)を持つユナイテッド・シネマ豊橋18へ久々に突撃かつ今年初の三本ハシゴを敢行。
『敵』『勇敢な市民』の後、一日を締め括ったのがこちら。
ひとつの事件をきっかけに、完璧な家族の崩壊が始まる。
ホ・ジノ監督、ソル・ギョング、チャン・ドンゴン等の共演による韓国製作のドラマ。
子どもが関係する一つの事件をきっかけに、兄弟である二つの家族が崩壊していく姿を描く。
弁護士であるジェワンをギョング、その弟である医者のジェギュをドンゴン、ジェワンの妻ジスをクローディア・キム、ジェギュの妻ヨンギョンをキム・ヒエが演じており、それぞれの子ども二人を加えた六人が主な登場人物。
物語は、冒頭交通トラブルから交差点で発生した死傷事故のシーンでスタートするのだが、ここが何気に長回しであり、現場の緊迫感が伝わってくるような映像のクオリティがかなり高く、この後の展開に期待が持てる導入となっている。
以降、それぞれ高校生の娘と息子を持つジェワンとジェギュ一家のそれぞれの日常が綴られていくのだが、兄であるジェワンは敏腕弁護士でかなり年下の妻、家事は家政婦が行うという上流階級ともいえる生活を送っているのに対し、弟のジェギュは、病院での勤務医であり、一般的なサラリーマンと比較すれば多いのだろうが、そこまでの収入ではなく、家には認知症を患いだした母の介護を妻であるヨンギョンが行っているという、対照的な二家族となっており、その状況を説明らしい台詞ではなく示してくれたため、本作品の世界観にすんなり入り込めたところ。
その後、ある事件をきっかけとして、徐々に家族が崩壊していくこととなるのだが、その事態が、同じく高校生の息子と娘を持つ私としては全くもって他人事ではなく、自分ならどうしたであろうか、つい親目線で考えてしまい、その行く末を固唾を呑んで見守った次第。
クルマ好きの視点からすると、二家族の比較は愛車にも表れており、ジェワンはイギリスの高級ブランド・ベントレー、かたやジェギュは国産となるヒョンデであり、日本で例えるなら、かたやマセラティ、かたやトヨタでもレクサスではなくトヨタブランドみたいなものであったのは見逃せないポイント。
前述のように、つい親目線で観てしまい、自分なら何を信じるかを考えたという点では、作風は違えど堤幸彦監督『望み』を思い出したところであり、イメージビジュアルにもなっている終盤のレストランのシーンにおいて、登場人物の心の揺らぎを表現したかのように、一瞬カメラがブレるところがあったのは、自分の心情とシンクロしたのではと思わせる素晴らしい演出であったとともに、そんな作品を先日観たオードレイ・ディヴァン監督『エマニュエル』に続き、早くも今年二回目の貸切鑑賞で堪能できたことに加え、日本版リメイクを作るのならば、弁護士の兄夫妻を内野聖陽と山崎紘菜、医者の弟夫妻として津田寛治(もしくは矢部浩之)と藤原紀香をキャスティングしたい秀作。
それぞれの務めを全うしよう。