このレビューはネタバレを含みます
吉田大八監督は本当に面白い。三島由紀夫の『美しい星』の解釈もとても好きだったけど、これもモノクロで、主人公の主観にただ寄り添って話が展開していく。筒井康隆らしいシュールさと、繰り返される夢オチ。淡々としていて良い。
主人公の渡辺はフランス文学の大学教授で、引退してから10年が経過している。でも昔の教え子と若干交流が残っていて、美しい女性のお弟子さんは贔屓目に見ている。『文学部唯野教授』のラストが恋愛ネタだったように、根が好き者なんだなあと思った。それが重要事なんだろう。
敵とは何か?老人ボケか……。渡辺には貯蓄の残高を見て、ある境目が来たら決行しようと思っていることがある。本当になかなか死ねず、それなのに老後の必要資金2000万円問題を言い出せば、こういう覚悟の人で溢れかえるのは目に見えている。
ゴダールだって、人間100年時代は長すぎると行為で示したんだぜ。