ダオ

敵のダオのネタバレレビュー・内容・結末

(2025年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

2023年につくられた吉田大八監督・脚本作品。大学教授の職をリタイアし祖父の代から続く日本家屋に暮らすやもお渡辺儀助77歳は預貯金があと何年持つかを計算しながら平和な日々を過ごしていたのだけれど……。

吉田大八映画は腑抜けから大好きなんですがいっつもスタイルが違ってね。なんか谷崎小説みたい。この『敵』は全編モノクロで魅せてくれました。儀助の生活を執拗に見せてから『敵』とは何なのかを見る者に突きつけてくる寸法。モノクロ映像からして問いなんですね。そして後半の混乱。

でもこれあたしには義母の日常を見ているようでした。夢すらも現実というかな。ベッドに寝たままなのに「良い温泉でした」とかいうんだから。亡き夫が近所のマダムと浮気してたりもするし。それに対し歯噛みして嫉妬したり。そうやって灰色の日々にメリハリつけて暮らす方が楽しくね? みたいな。右脳にぜんぶ任せちゃいなよという。

筒井康隆のお話ってたぶんそう。右脳というよりかは潜在意識の混沌を意識上に汲み上げてきてホイって提示したようなお話が多い。この映画はそれを踏まえつつ老いを前面に見せながらもしかし世界の混沌をもシニカルに描いた感じ。だからこれからは「難しい」とかって言っちゃダメなんだわ。選別はすでに始まってる。というかまぁとっくに終わってるわけだが……。
ダオ

ダオ