TakayukiMonji

パサジェルカのTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

パサジェルカ(1963年製作の映画)
4.0
製作途中で、アンジェイ・ムンク監督が事故死してしまい、未完成のままだったものを友人たちが再構成して完成。
本当にこのプロットが監督が意図したものかは確かめようがないのだが、その不確かなあたりも観客の想像に委ねられる。

タイトルの“パサジェリカ”は船客という意味なのだが、この船上のシーンは静画しかなく、本当はこの船上の構成があったのか否かは気になった。
アウシュヴィッツの女看守だったリザが当時のことを回想していく流れ。ナチスを取り上げた映画はいくつかあるが、女囚マルタとリザの関係性とリザの心理描写が中心でこのやり取りから“看守側の人”の視点が深掘りされていくのはあまり見たことない設定。あくまでリサの回想が主眼ではあり、収容所での残虐な行為が背景と化して構成されている。この行為自体が“日常的に行われていたもの”として淡々と描かれている。(これは「サウルの息子」などへの影響を感じる。)

船上のシーンにでてくる女性は誰だったのか。罪悪感と苦悩に満ちたリザの回想。監督の事故死によって未完になったことで生まれた不確かな要素が、この作品の完成度を一方で高めている気がする。
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