たぬー

どうすればよかったか?のたぬーのレビュー・感想・評価

どうすればよかったか?(2024年製作の映画)
4.5
統合失調症になった姉を25年間病院に連れて行かずに家に閉じ込めた家族を弟が問題提起の手段として撮影したドキュメンタリー。

ポレポレ東中野で観た予告編から凄い衝撃を受け、これは観ておかねばならないと思ったが、連日満席でやっと今日観れた。

これは評判になるのも必然のズシンと来る作品。
統合失調症で激しい症状が出た人にこんなに向き合ったことがあるのは家族か医療従事者ぐらいだろう。街でそれらしき人を見かけることはあっても、コミュニケーションを図ることはまずない。
テレビなどのドキュメンタリーの場合も殆どはプライバシーに配慮してモザイクがかかっていたりする。
しかし本作は違う。がっぷり四つに向き合い、20年以上追い続ける。撮影者が家族でないとこれは絶対に撮れない。

姉はもちろん母親の妄想も始まってしまったあたりの衝撃。高齢の父親と3人でどうやって暮らしていたのだろう。
何も起きていないかのように振る舞う父親も狂っている。

しかしようやく適切な医療機関で薬を処方され、姉はコミュニケーションが取れるまで回復する。カメラに向かっておどけて見せる。
元々明るくチャーミングな人柄だったんだろう。40年近く失われていた平和な家族の時間が帰ってきたが、なぜこんなに時間が必要だったのか?
2時間程度の尺の中で誰にでも訪れる「老い」を生なましく見せられるのも胸に迫るものがあった。
「どうしたらよかったか?」という問いは誰の人生にもあることだ。なるべく後悔の少ない人生にしたい。

ズシンと来るけど、ところどころ笑えるような場面もあって、不思議と後味は悪くない。
最後の父親との対話がかなり聞き取りづらく、あそこは字幕をつけて欲しかった。(おそらく100歳近い高齢というのも驚きだが)
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