Arata

アラビアのロレンス/完全版のArataのレビュー・感想・評価

4.0
新年に大作を再鑑賞。

2日と3日の日に、ケネス・ブラナー氏の監督・主演作、「オリエント急行殺人事件」を鑑賞し、その際イスラエルの嘆きの壁でのシーンに、イギリスによる三枚舌外交への言及とも取る事が出来る描写があり、今作を鑑賞。

今回、U-NEXTにあるこの「完全版」と言うのを観たのだが、以前に観たのが一体何版だったのかは不明。


印象的なシーンが数多く、また沢山の映画関係者が絶賛する作品なだけあって、見応えはとてつもない。


昨年観たテレビドラマ、VIVANTでのとあるシーンに既視感があったのだけど、この映画だったのかと気付く。


元々心優しいはずのロレンスが、処刑を楽しんだと懺悔したり、アリに制止されるまで殺戮に没頭しているシーンなどから、一種の戦闘ストレス反応を起こした状態にあると思われる。
戦争は人を変えてしまう。

しかし、人間には本来闘うと言う本能が備わっていて、文明社会において抑制状態にあるが、戦争などの極限状態に置かれると、一気に解放されて本来の戦闘民族「地球人」が現れるとも言われている。

人間に最も近い遺伝子を持つと言われているチンパンジーも、研究の結果から「様々な利益を占有したい」と言う思いにより戦闘本能を発揮するとも言われており、人間たちが争う理由と全くと言っていい程同じで愕然とする。


この話も、他の幾つもの戦争と同様に、政治によって始まっていく訳だが、人は戦闘状態に入ると正しい判断が出来なくなる。
更に言えば、従来の価値観を否定して新たな価値観を埋め込む、典型的な洗脳などが進んでしまう事により、兵士や民衆を扇動すると言う、戦争の恐ろしさも描かれている。


冒頭のバイク事故の様に、急には止まれなくなるほど加速したロレンスの、戦地での行き過ぎた過ちが、壮大なスケールで映し出される。


【飲み物】
レモネード

砂漠を彷徨い歩き、ようやく辿り着いた司令部内で飲む。
司令部内のバースペースは、当然軍の施設であり、軍と関係のないアラブの少年は本来は入館すらも出来ないはずだし、当然飲食物の提供も出来ない。

しかし、それらの静止を振り切り、ロレンスが少年にもと「大きなグラスにレモネードを2杯、氷を入れて(字幕ではコップ、セリフではglass)」と注文し、少年にも飲ませる。
少年はそれをひと息に飲み干す。

生命は平等に扱われるべきであると言う意味合いも感じるし、何よりもこの一杯のレモネードで生命が救われるとでも言う様な素晴らしいシーン。

それを観ていると、どうにもレモネードが飲みたい衝動に駆られる。
飲食物一つとっても、重要な意味があると言う、細部に神宿る映画であると感じるシーンの一つ。

このレモネードと言う飲み物は、発祥がエジプトであると言われていて、レモンと蜂蜜を水で割ったものだったと言われている。
司令部が、エジプトであると言う事に起因しているのだろうか。

水分だけで無く、糖分とビタミンCも摂取出来るので、栄養と言う観点からも非常に効果が高いと思われる。

現代では、蜂蜜以外にも様々な糖類が使用されたり、スパイスを効かせたり、水では無くお湯や炭酸で割る等、製法や味の種類など多岐にわたる。


【総括】
平和な世の中と、戦争の英雄であると同時に残酷な被害者であるロレンスを、新たに生み出さない世の中を願ってやまない。
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