離婚の危機を迎えた夫婦が、関係を清算すべく最後の家族旅行に出かけるNETFLIXの新作で、昔から繰り返し描かれてきた家族再生の物語にジーンと来た。娘のポール・ダンスの大会会場に家族全員で向かうプロットは、まるで「リトル・ミス・サンシャイン」。夫婦関係と親子関係の問題を同時に詰め込む密度の高い会話劇から、終盤で思わぬ要素が入り込んでくる筋書きに意表を突かれたのと同時に、それがちょっとノイズにも感じた。スウェーデン映画で監督も役者も知らなかったけど、家族全員がそれぞれの役を自然に演じてて引き込まれた。
夫婦カウンセラーのグスタフは、自分の仕事とは裏腹に妻のステラと冷えた関係にあり、反抗期を迎えた娘やわがままな息子の世話を全て妻に押し付けて家庭内で孤立してる。そんな状況に耐えられなくなったグスタフがステラに離婚を申し出るんだけど、ステラが離婚承諾の条件として「家族関係を以前の幸せだった状態に戻す」という不思議な提案を持ち出す(ジョージ・オーウェルの「1984年」で、わざわざ洗脳が完了してから処刑するくだりを思い出す)。ちょうど娘がポール・ダンスの大会を間近に控えてて、会場まで家族全員で旅行することになってから展開する怒涛の会話劇がスリリング。
夫婦関係が冷えたのは、どうやらステラが仕切り屋で、出来の悪い(と思い込んでる)夫を責め続けてることが原因らしいと分かってくるんだけど、グスタフはグスタフで外に愛人を作ってて、子どもたちにも関心がなく、相当なクズに思える。この二人が会話に会話を重ねて少しずつ昔の良好な関係を取り戻していくのと同時に、子どもたちに寄り添っていく様子が胸に沁みる。
中盤からステラがモルヒネを飲むシーンが差し挟まれて、なんだか急に別ジャンルが入り込んでくる感じでちょっとモヤモヤした。でもこれによって、ステラが序盤で家族関係の改善を離婚の条件に持ち出した理由が分かる仕掛けになってて、穏やかな幕切れに静かな余韻が漂った。ステラの行為は、「ファミリー」(1983年)とは違う方向から病気に向き合った結果で、これもまた一つの解だね。