女性作家がしがない俳優とラブロマンスに落ちた果てに陥る絶望と恐怖を描くサスペンスで、ジョーン・クロフォードの老いの翳りが見える美貌に、業界で地位を確立した女性の孤独が滲んで味わい深い(彼女は本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされた)。ジャック・パランスのいかつい顔付きと爽やかなふるまいのミスマッチが何とも不気味で、最高にラブラブな前半から一転して恐怖が訪れる後半の対比が見事だった。エルマー・バーンスタインのキャリア最初期の作品で、手堅い劇伴が雰囲気を盛り上げてたね。
新作舞台劇のリハーサルをしている女性作家のマイラ・ハドソンが、主演俳優のレスターの演技が気に入らずに降板させてしまう。その後、マイラがレスターと偶然再会し、話をしてみればレスターが実に素敵な好青年であることが分かり、二人が急速に惹かれ合って結婚する展開となる。このあたりのジョーン・クロフォードの美貌がまばゆく、思わず見惚れてしまった。新婚旅行先の別荘での手すりのない危険な階段や、マイラが使ってる口述録音機がいかにも伏線という感じで、後のサスペンスを予感させる。
レスターに愛人のアイリーンがいて、二人がマイラの遺産を狙っていることを知るシーンのマイラの絶望の表情がすごい迫力。ここから彼女が恐怖心を隠しつつ、自分の遺産を狙うレスター達への緻密な復讐計画を淡々と実行していくのが、さすが作家と思わせる。彼女が計画終盤のスケジュールを頭の中で入念にリハーサルするときのギョロっとした目のアップが印象的で、計画は往々にして狂うことがあるという世の常が悲劇的な結末を招く。
マイラとレスターの再会はもしかしてレスターの仕込みじゃないかと最初疑ったけど、レスターとアイリーンの再会も偶然だし、遺産狙いは成り行きなんだね。ということは、レスターがアイリーンと再会してなければマイラは幸せなまま終わったかもしれない。でもレスターはもともとアイリーンから借金してたわけで、やっぱり最初から遺産狙いだったのかな?ここはちょっとすっきりしない後味が残った。