2025年108本目
IT’S TIME TO LIVE.
レネー・ゼルウィガーが主演を務める世界的ヒット作『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズの9年ぶりの続編となる第4作
結婚して2人の子供をもうけたものの、夫・マークを突然亡くしたブリジットが、悲しみに向き合いながら自分の居場所を再発見しようとする姿を描く。
4年前、最愛の夫・マークがスーダンでの人道支援活動中に命を落とし、深い悲しみを抱えながらシングルマザーとして2人の子どもを育てるブリジット。全力で子育てに専念してきたが、親友たちや元恋人・ダニエルに支えられ、テレビ局の仕事に復帰することに。そんなある日、ブリジットは公園で出会った29歳の男性・ロクスターとアプリでつながり、意気投合。一方で、厳しい理科教師・ミスター・ウォーラカーとは、息子・ビリーに向ける真摯な優しさを知り、どこか気になる存在に。子育てや仕事に追われながら、子どもたちに「いつでもマークが恋しい」と話すブリジットだったが……。
監督は、『To Leslie トゥ・レスリー』のマイケル・モリス。ブリジット・ジョーンズ役のレネー・ゼルウィガー、ダニエル・クリーヴァー役のヒュー・グラント、マーク・ダーシー役のコリン・ファースらお馴染みのキャストが顔を揃え、『プライム・ターゲット 狙われた数列』のレオ・ウッドールがロクスター、『それでも夜は明ける』のキウェテル・イジョフォーがウォーラカーを演じた。
2001年に第1作が公開されて以来、全世界の観客に親しまれ、多くの女性の人生に寄り添ってきた『ブリジット・ジョーンズ』シリーズがついにその最終章を迎えた。アラサーだった主人公・ブリジットは、アラフィフとなり、2児の母となって再びスクリーンに戻ってきた。そのチャーミングな“ジタバタ感”や、どこか憎めない等身大の魅力は、時を経てもまったく色褪せていない。
本作は、人生の「再出発」を描いた物語。最愛の夫・マークを4年前に事故で失ったブリジットは、傷を抱えながらも、自分自身と、子どもたちの未来のために、もう一度人生を立て直そうとする。その道のりは決して平坦ではなく、周囲の目や孤独、不安と日々格闘しながら、彼女は一歩ずつ歩いていく。
新たに登場する登場人物たち──厳格そうに見えて実は繊細な息子の担任教師や、公園で偶然出会った年下の青年──との関係は、ブリジットの再起をそっと後押しする存在として描かれ、人生には予期せぬ出会いが希望の光となることを静かに語りかけてくる。
冒頭から、マークの不在は語られずともすべての場面に染みついている。写真や回想、何気ない会話のなかで、彼の存在は常にブリジットとともにあり、観る者にとっても深い喪失感を共有させる。彼の死は、物語の起点でありながら、ブリジットとその子どもたち、そして旧友たちの現在を深く照らし出す静かな灯りでもある。
そんな中、お馴染みのプレイボーイ、ダニエルも再登場する。歳を重ねた彼が相変わらず調子の良い言動を繰り返しながらも、どこか物悲しさを漂わせている姿に、年月の重みと、それでも変わらない人間の愛嬌を感じずにはいられない。彼の存在は、本作にほどよい軽やかさと、老いゆくことへのユーモアを添えている。
物語のもう1つの軸となるのが、ブリジットの長男・ビリーの成長。父の死をまだ受け入れられずにいる彼は、母を悲しませまいと、自分の気持ちを抑え込んでしまう。その心の機微がとても丁寧に描かれており、彼の心の奥底にある痛みに自然と共感を寄せることになる。そんな彼を支えるのが、かつては不誠実だったダニエル、そして厳格だと思われていた担任教師。正反対の2人が異なる形で彼の成長を導いていく構図は、本作の中でも特に心温まる見どころとなっている。そして、終盤にビリーがある思いを表現するシーンは、過剰な演出に頼ることなく、それでも涙を誘うだけの力強さと誠実さを湛えている。
言うまでもなく、本作をここまで心に残る作品へと引き上げている最大の要因は、レネー・ゼルウィガーによるブリジットというキャラクターへの深い愛と理解にある。ときに滑稽で、涙ぐましく、そして芯の強さを秘めたこの女性を、彼女はありったけの愛情とユーモアで演じきっている。体を張って、年齢を重ねた女性のリアルな生き方を見せながら、「ありのままの自分で生きること」の大切さを押しつけがましくなく、しかし確かな説得力を持って伝えてくる。
完璧じゃなくてもいい。自分を愛し、前を向いて歩んでいけるならそれでいい。そう思わせてくれるあたたかくて優しいフィナーレだった。
エマ・トンプソンがツボってるシーンがお気に入り。