このレビューはネタバレを含みます
普段はアニメの先行公開などには手を出さないのですが、スタジオカラーが制作するガンダムということですので鑑賞。
公式のサイトのイタリア語版がやらかして、既に「ジオン公国が勝利した世界線の宇宙世紀」というのは知った状態で鑑賞しました。
大きく分けて前半の「シャア・アズナブルがRX-78ガンダムを鹵獲してジオン公国が1年戦争に勝利する」までのパートと、後半の「その後のUC0085で主人公のマチュがGQuuuuuuXに乗り込み初回のクランバトルに勝利する」までのパートになっています。
正直なところ、前半のパートは「シン・ウルトラマン」や「シン・仮面ライダー」でやった「既存作品の新解釈」で、実質「シン・ガンダム」です。
原典では実現しなかった「ビグ・ザムの量産」などのネタは仕込んでいるものの、前半パートでここまでしっかりと描くべきかは疑問の残るところです。
スタジオカラー的にはここを描きたいからガンダムの仕事を受けたのかなと、邪推してしまいます。
もっとサラッと流す感じで、必要最低限の部分のみ描いた方がこの後のTVシリーズの深みがましたように、個人的には感じます。
ちなみに「ククルス・ドアンの島」が映画化された際に「シャリア・ブルをフィーチャーした作品があっても良いのでは?」と思っていた私の意を汲んだかのように、シャリア・ブルが重要人物として立ち回ります。
(フィーチャーとまでは流石にならなかったですね)
後半パートは、前半パートでも残した謎を踏まえて更に謎を散りばめていっています。
物語の導入としてはまずまずですね。
ただ、世界観とキャラデザが大きく変わっているのが目に付きます。
前半パートも決して原典に忠実なキャラデザではなかったのですが、かなり寄せてるのは確かです。
しかし、後半パートは完全にスタジオカラーの作品っぽいキャラデザになっていて、一部のキャラは整合性が取れない感じがします。
この点はもしかすると物語が進むことで伏線回収されるかもしれませんが、今のところは納得できてません。
また、この作品は今までの「宇宙世紀」シリーズとも、かつては「アナザーガンダム」、現在は「オルタナティブガンダム」と呼ばれる「非宇宙世紀」シリーズとも違う、「宇宙世紀のIF」を描くという新たな試みをしている点については評価できます。
「非宇宙世紀」シリーズは、時に「この作品はガンダムである必要性があるのか?」という指摘を受けることがありましたが、この作品は「ガンダムでなければならない」作品でありながら今までの「宇宙世紀」シリーズとは異なる路線を切り開いたとも言えます。
これは「ガンダム」というシリーズ、特に「宇宙世紀」シリーズが壮大な年表を作り上げた結果、架空戦記を作れるまでになったからだとも言えると思います。
総評ですが、アニメのスタートとしては楽しみで期待感の持てる作品ではあるのですが、作り手の「描きたいこと」が先行している作品だと感じました。
ただ、「描きたいこと」が多くのファンに大きなインパクトを与えているのも事実なので、評価はできるかなと思います。
私個人としてはもう少し前半パートを細かく分割し、テレビ放送時に回想シーンとして組み込む方が良かったかなと思ってます。
視聴者が現時点で知っておくべきこと以上のことを、前半パートは描いている気がしました。