ミラーズ

機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-のミラーズのレビュー・感想・評価

5.0
「2次創作オッサン接待のビギニング編と『トップをねらえ!』シリーズや『フリクリ』を彷彿させる後半が融合した怪快作」

今年放送される予定?の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」を劇場用に再構成したと聞いていたので、ガンダム好きとしては見るかと思い初日の夕方に鑑賞

ジオンが勝利した世界線のアナザーストーリー(パンフ情報だと公式はアナザーではないと言っているらしい)だとは、去年の作品の発表時にSNSでネタバレを喰らってますが、個人的にはネタバレ上等(ネタより過程や作品の質が重要と思うので)なので今回も問題なしで、見たが聞きしに勝る同人誌の2次創作なオッサン接待のビギニング編に唖然とはした。
聞けばビギニング編は庵野秀明の脚本との事で、何となく納得だが、ファーストガンダムの要所を上手く拾い上げて再構築と変更改訂をしておりその手腕には改めて舌を巻く出来栄えで、もう一つの利点として安彦良和氏が最初にデザインしたキャラクターを、近年のオリジン版とは違う初期劇場版のラインで、描いてくれていて、特に安彦氏の巧さである唯一無二のオッサンキャラ達が生き生きと作画で描写されるのは良かった。(ファーストガンダムの唯一無二な部分に敵対するジオン側のキャラクターが、ホワイトベースの面子とは違う大人としてさり気なく演出されており残念ながらこれ以降の作品には見られない)

中盤からの本編?は鶴巻和哉監督と脚本とシリーズ構成を榎戸洋司氏が担当していて過去のコンビ作でもある『トップをねらえ!』シリーズや『フリクリ』を彷彿させるもので、こちらキャラクターデザインや音楽の使い方も含め非常に明るくポップで今の作品だと分かる。

中盤の舞台がビギニング編から数年後(5年だっけ?)になりお馴染み?のサイド6で、今回の主人公であるアマテ・ユズリハ(マチュ)の登場からガラリと作品の雰囲気が変わり青春学園物の様相あるが、世界観としてはやはり戦争の後のどこか歪な権力関係などが垣間見える設定で後にハードな展開があるのでは?とある種の期待もある。(今回の映画ではあくまで爽やかな面が多いけど)

気になる部分はあまりないが、サイド6の背景にある公共表示板や標識などが日本語メインのその他英語などになっており、マチュの住む家や学校も日本の延長線的な描写になっておりFガンダムで見られた当時の未来型無国籍観から変えているのは意図的なのだろうか?と思う。

鶴巻和哉監督が関わった『トップをねらえ!』などは作られた時代が日本が最高潮に発展していたバブルの頃(泣)で、当時の日本人は経済力と金にあかせて世界中の有名な不動産や美術品やブランドを買い漁り世界中の先進国から顰蹙を買っていた時代で、日本が世界を支配すると言われたのをネタして日本が本当に世界を支配していた世界観の作品なので、劇中の表記は全てエヴァの前哨戦みたいなフォント表記の日本語で統一されていて、本編からカットされた描写で外国人が日本語を習う場面もあったと聞いているが、それを踏襲しているのかな?とも思っている。

ビギニング編から本編に橋渡すカタチで、Fガンダムで僅かな出番で印象的だったシャリア・ブルをピックアップしてるのも嬉しいが、やはり他の登場人物達もなんらかのカタチで関わって来る事が、予想されるので今後の展開が楽しみではある(主人公のマチュはZガンダムに登場するあのキャラなのだろうけど)

余談ですがガンプラなどの模型趣味をしている自分としては、今回のザクを含めたモビルスーツのデザインや描写はあまり刺さらなかったので、近年ある修羅場の様な争奪戦には参加しない予定。
余っていたら購入するかな。
メカや描写に関しては『水星の魔女』や『復讐のレクイエム』の方が好きかな

全体的にはファーストガンダムのアナザーストーリー的な物は前半に詰め込み、独自の展開してくれる期待もあり作品的にも81分がとんでなく面白い仕上がりになっており中盤の音楽の使い方(偶然なのか去年公開されて一部映画ファンの度肝を抜いたルカ・グァダニーノ監督の快怪作『チャレンジャーズ』みたいな唐突な音楽の使い方)も巧みに物語を盛り上げるのに一役買っているので、音響の良い映画館で見るのをオススメできる。

余談2
SNSで偶に論争に上がるけどファーストガンダムの設定デザインは明らかに最初の『スターウォーズ』(1977年)の影響下にある