めしいらず

異邦人のめしいらずのレビュー・感想・評価

異邦人(1967年製作の映画)
2.9
罪人が罪悪そのものではなく人間性や側面ばかりがあげつらわれ極悪人に仕立て上げられてしまう恐ろしさ。一つの事象を、私情を挟まず客観視する者と、疑惑の穿った目で見る者。それぞれが見たものは同じなのに違って見えている。常識に疑問も持たぬ多数派は非常識が怖い。理解不能な事象は理解可能な型に押し込めないと不安なのだ。その都合良い道具が「動機」だろう。果たして人の行為はいつも動機に起因するものなのか。扇情的な報道や感情的な世論におもねる司法は人を裁けるのか。皆が同じ方向を向き、それ以外が許されない気味悪さ、息苦しさを思う。カミュの原作をヴィスコンティが忠実に映画化。仕方がないと思わないでもないけれど、饒舌なモノローグがどうも語り過ぎに感じてしまった。ヴィスコンティがこれを映画にした「動機」を思わず詮索したくなる。彼もまた「太陽のせい」と言うだろうか。
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