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アレックス 196とピンクの砂浜のarchのレビュー・感想・評価

1.4
「インターネットの恋人たちに捧ぐ」なんて締め方をするがその実、この映画の眼差しは現代ではなく、過去に向けられていて、「インターネット(があったとしても繋がるには不便な"かつて")の恋人たちに捧ぐ」というのが本質的なところだ。
ネトゲをやってたら劇中のネトゲのリアリティのなさに愕然とするはずだ。作り手もそこは分かっていて、ネトゲながらもノスタルジックで、チープさに愛嬌が滲む、そんな塩梅にチューニングされているのが分かる。

自分はその塩梅に最後までノレずに終わった。そのネットと現実の乖離から生まれる悲恋の儚さは凄くノスタルジックで"かつて"で、だけどそれがいつの時代にも共通する片恋慕で、時代を超えて普遍的であることにあまり自覚的でないように思えたからだ。
本当にインターネットの恋人たちに捧ぐといいのなら傑作ドキュメンタリー『バーチャルで出会った僕ら』ぐらいはやって欲しい。

現実にゲーム演出が登場する流れは、ゲーム少年の主観的な映像として、面白いものが色々あった。
その中でも最後の涙はあざといが過ぎるが、それよりも注目すべきはズームアップだ。
オンラインゲームの世界に没入する演出としてまず冒頭の方で、ズームアップがある。そして最後にも同様のズームアップがあるが、これは彼の涙を際立たせる為に使われる。
その対比がこの映画における始端と終端を示し、彼の変化を決定的にする演出として機能している。
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