◎ミッション百合物のメキシコリメイク主題は愛

1951年 ﾒｷｼｺ ﾌｧﾏ•ﾌｨﾙﾑｽ ﾓﾉｸﾛ 102分 ｽﾀﾝﾀﾞ−ﾄﾞ
＊コマ飛び、ノイズ、ピンぼけ等あり

1931年の同名のドイツ映画（＊1 ）のリメイク。

＊1
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/制服の処女_(1931年の映画)

16歳で修道院に付設された女学校に入れられた孤児マヌエラが、非修道女で任期付きで着任していた婚約中の教師ルシラからの愛情に満ちた指導に、次第に思慕の念が募って恋心に近い感情となっていくが‥‥

【以下ネタバレ注意⚠️】








厳しい戒律で生徒たちを拘束していた修道院長から禁忌である「偏愛」に陥り地獄に堕ちると脅され、半狂乱となって鐘楼から投身して絶命。

虫の息で「神は私をお赦しにならないのでしょうか？」と尋ねるマヌエラに、院長はようやく我が非に気が付いて、「いいえ、神は全ての人をお赦し下さいます」と動揺しながら答えるのであった。

この事件の直前、院長から堕地獄の烙印を押されて狼狽するマヌエラを捨て置けず、ルシラは婚約者に「結婚を少し待って欲しい」と伝えたが、「もう待てない」と一蹴されていた。

事件後、平静を取り戻した修道院には修道女となる儀式に臨むルシラの姿があった、というお話。

‥‥言うても戦後の作品なので、基本的にミッションスクールにおける女生徒と教師との百合ものとして話は進むが、生徒たちは、かなり個性的で掟を破って恋人と密会して妊娠する者もいれば、成績のために進んで密告する者もいる、ちょっとおへちゃなムードメーカーもいたりで普通の学園もの的なノリもある。

ただ、テーマとしては、「愛」の扱いをめぐる戒律重視派の院長と、おおらかな愛情こそが生徒たちを育むと考える非修道女の教師ルシラとの相剋が眼目のようで、終盤で、それまでは腰が定まらないように見えたルシラがハッキリと院長に上記の自分の考え方を主張していたことに感心した。

そもそもキリスト教における「神の愛」は、「赦し」にこそ本質があるのであって、それこそ、まるで中世の暗黒時代のように堕地獄の恐怖を吹き込んで信徒の行動や感情の自由を奪おうとするのは、宗教的に見ても間違っているはずだ。

そのことがラストで示されるのは良いが、それが肝心の生徒マヌエラの自死によって実現されるというのは、『ロメオとジュリエット』の焼き直しではあるまいし、何だか戦後の作品らしくない後味の悪さだ。

それに、折角ルシラが院長の教育方針に堂々と異を唱え、その院長も、許されないと宣告したマネエラに最期は「神は全てを赦します」と事実上自分の負けを認めたのに、ルシラが修道女になってしまう結末も納得が行かなかった。

《その他の参考》
＊2 国立映画アーカイブ作品紹介
www.nfaj.go.jp/program/mexico202501-12/

＊3 俺の命はウルトラ・アイ
制服の処女　1951年　アルフレド・クレベンナ監督版
2025-03-05 18:20:00
ameblo.jp/ameblojp-blog777/entry-12888778159.html

＊4 外国語・詩・歌・映画・地元学(船津建)
映画『制服の処女』ープロイセン主義とワイマール精神
2021/02/18 16:00
https://heinrichfuna.jugem.jp/?eid=143#gsc.tab=0

《上映館公式ページ》
京都文化博物館
メキシコ映画の大回顧
2025.2.26(水) 〜 3.9(日)
会場： 3階 フィルムシアター
www.bunpaku.or.jp/exhi_film_post/20250226-0309/

✔️🔸『制服の処女』(3.9)🔸『次の夜明けに』(3.7)🔸『忘れられた人々』(4.6)🔸『マカリオ』(3.7)▶️▶️

　メキシコ映画の特集は、対象が多岐多年にわたり、薄い総括しか出来ないままに中断していたが、どうせ墨映画なんて、とバカにしてたのが、周りが全て観るんだと意気込んでいる人が多く(企画の大きさへの自然反応も入ってるか)、それ程のレベルでもないのに、何で?と疑問を抱くうちに、彼らの思惑とは別に、よくできた映画ばかりが魅力を放ってるのではない(フィゲロアの撮影を中心とした、技術スタッフのレベルは、気負わずとも高い)、と今更ながらに思い、その映画の縁の緩やかさ・崩れた味を、映画の中心と言うより衛星国の墨国にまさぐってみたいと思った。
　しかし、確かに面白さや活力、それと職人芸の張りには、作品の品位とは別に堪能させてくれた、今回のメキシコ映画の特集だったが、圧倒的で弱点も少ない、観た人の殆どを間違いなく感動に誘った、真の名作も散見されたのも事実だ。中断し、だいぶ間か空いたが、後少しでこのFA特集の総括迄行き着き直したくもなった。
　広さや量から質や高さへ持上げられてく部分もしっかり生じる。ガメスのような新鮮で圧倒的な才気とは違うが、手応えが違う次元に昇華してく、逸品らを改めて纏めて、みたい。まぁ、名作というのは現実との葛藤、快楽に留まらないモラルの問題も出てくるので、手放しで嬉しい作らとも、言えない面もあるが。
　その中でも、戦前のドイツ映画のリメイク作、『制服~』が飛び抜けた支持を今回の限られた観客の中でも、はっきり得たようだ。ヒトラーが国を治める前夜のオリジナルの暗い予感を、振り払う、歪みを歪みに留め置かない力がある。只受けたのは戦前作の眩しいものへの肩のすぼめ方にしても。
　個人的には、欧州特有のテイストの名作のリメイクを新大陸で、なんてのは端から見る気なく、やり過ごしてたが(しかし近年の墨大傑作、ドイツ人しか出てこない、ドライヤーのリメイク的『静かな光』は正にそんな映画だったが)、今特集の傑作として、『マカリオ』と共に、若いのに古い映画のスペシャリストが太鼓判で推してきたので、腰を上げくなった。確かにインディオの空気は皆無に近く、白人系ばかりで変な感じはする。オリジナルも建築美術の圧倒的な力が印象的だったが、これも目の高さだと、波形的な湾曲のバックが不思議な書割に見え、俯瞰めの退き図では、夢幻的なユニークで浮かんだような不思議世界に見える。それよりも、行儀作法を知ることなく識字すらできなかった貧しく虐げられ歪んだ環境から拾われてきたヒロインの、閉じ込められ不自由も高度な教育と、これまでなかった同性年上の憧れに出会ってそれを手繰り寄せんとしての、人間的成長と伸びやかな力感、古風な学校を問い揺るがす、自然体がリーダーとも見え感じられる、尋常でないこちらをも内的に揺るがすを成し遂げてる、既成枠を何重にも打ち破る手応えと快感の、本物自由さは、ヒトラー政権少し前のオリジナルを上回る。その人間としての成長は目まぐるしい程で、そこで生まれる歪みも含めてそのスピードは圧倒してくる。人間の可能性を感じさせる危険な程魅惑的だ。
　おまけに演劇の大きな役をこなした後、打ち上げの飲料に友が無邪気な盛り上げ意識から、酒を混ぜてしまったのへ、ヒロインは知らず酔っ払い、邪気のない同性愛を、禁断無視、おおらかに宣言する。
　まだ気弱さが残ってた頃から、数少なかった友人生徒に、園外の恋人とのキューッピット役を果たし妊娠事件まで起こしてしまったり、また寄宿学校が完全に外部を一切遮断してる自明の事に異を表し、理解あるあの教師を動かし、校長への直談判で部分的一時開放を実現してきた(羽目外しが目に余り、再度完全閉鎖を起こしてきた)事の延長でもあったが、酒も入ってのタブー破り宣言は、先の妊娠発覚より強い反発を教師側に引き起こし、独房的監禁への厳罰を呼び起こす。
　元より学校側も、規則がんじがらめは、信念よりも長い伝統とその事なかれ主義の要素が強く、ヒロインの、反発よりも、命を賭しての神と世界に自己を問い死に至る最期に、根本を改めて問直しの結び付きに至る。彼女の唯一の理解擁護者から、最大の成長路寄添い歩み者になってた女教師は恋人卒業の後も、恋人の待つ俗世に戻らず、修道女志願を、無理なく敬虔に実現してく。「牢獄・不寛容というが、解くとこんな風に」「私の事を愛してくれる人はいなかった。特別扱いでは?　差異をつけては?」「字も知らずから優秀に、幸せ・自由も」「飲み過ぎて語り過ぎ、罰するへ、皆は語り合わぬ事」「神は愛、それを通常の愛情と混同してる」「子を宿すより罪、一生の罰へ」「魂を救う、神は許すか?　俗世の愛を知らない」「その死を活かす」柔らかなトーンは、禁断・異端を離れ、丸ごと受け止めてく。
　女教師は、修道女ばかりの先生の中で唯一、婚約者の恋人が卒業するまでの間、民間から推薦で短期特別に入って来た人だ。教師らの集団決議などに参加しなくてもいいのだが、物怖じはなく、ストレートな物言いで、発言もしてく。
　不幸な生い立ちで匿う者を失った少女は、その後引き取られたうちでも手の施し用がなく、由緒ある修道院の修道女らによる厳しい上流伝統教育による、寄宿女学校だけが頼りとなる。そこが舞台として描かれてく。建屋周辺、学校と外部の境らの柵も僅かに出るが、先に述べた学校の造型の特異さとバランスと広がりが、世界そのものの多面と安定を表してく。生徒側も教師側も豊かで個性的なキャラクターにあふれているが、当初文盲で社会性も殆ど新入生のヒロインは、目まぐるしく、かつ魅力的に成長し、幼さも残してたのと併さり、鮮やかな地点に立ち、自らの現在の希求を畏れもするに至る。
　背景も淡く見え書割的も、不思議な立体を示す空間で、切返しや縦奥の図、自在以上の合った移動のフォローや廻るめに寄る味、俯瞰や表情を見詰めるC・Uらが、映画的とは別の惹き付けを呼んでく。
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　以下3作は、本特集の中心となる名撮影監督の適切な手腕が、作品を深め極めてくが見本的なものでもあった。『次の~』。これは秀れたと言えるのは少ないなぁの墨映画の中でも、やはり際立つ秀作。労働者を圧迫の施政側が持ってる、ストと外国勢力の癒着を証明した書類(内実判らすのが難しい、まんま民衆に公開されると表面的には革命派に不利なのか)を、郵便局に留まってる間に奪おうとする、革命派と市長自らも乗り出すその配下らの確執を描く作だが、両者の力と主張のせめぎあいと言うより、両者の熱が下がり、日常に埋没仕掛かってる中でのモチベーションの盛り上げ方や逆に脚を引っ張られ情にほだされる面(夫との生活に安住しているヒロインを、学生時代以来の嘗ての同志、今も活動家が、そちら側に再度引き込もうとし、この場を離れての新生活の愛の告白もする。夫は現在への自戒や迷いもあり、顔の割れていないということで書類の奪取の実行人に進んでなる)が、複雑に単純なサスペンス以上に足場を錯綜し、生きてく切なさや辛さを伝え来る作。
　とにかく伝説の撮影監督の、モノクロのコントラストがクッキリというのと対極のグレーの段階が様々でかつ途中でその内の一層内で変容も普通のナチュラル感、かつそれぞれに2分画調ならと思われる、艶光沢を無理矢理でなく持ってる。正面正対カットが少なく自然な空間的が感じられるやや斜めめが展開をヘソなく転がしてく。(フォロー)縦移動もだが、同じく(フォロー)横移動の効果や選択が素晴らしく、カメラ位置や目線の気配りや対応にカットの選択自由かつ端正も表し、劇場であろうと、外階段付き上下に距離と角度のあるアパート内外、トンネル的通路、ラストの駅ホーム、らを汲めどなく部分をつなげ深めてく。上下も加わっててラスト等去る列車に対し気付かれない位カメラが上がってて、また列車が去った後いつしかカメラが降りてってて、男と列車で去ったかものヒロインが、家族と共に見送ってる背姿捉えに至るは見事。
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　『忘れ~』。ブニュエル復活と叫ばれ、未だに彼の最も知れ渡った作は、日常や夢の中・意識朦朧の中のもろ荒々しいシュールリアリズムは境目つけずに侵入し併存してて、それは恐ろしい程で、鶏や鳩等の鳥の奇態、ロバや犬の接近、スローや荒れた道等の距離の拡大力、の嵐的世界と底で溶け合いながら、いざりや盲・病人地続き存在してるの、ミルクの美容ならぬ精液イメージ、人間の表情両面触れ幅、突発の暴力・虐めの容赦なさとそのカット、良識や良心の隣接の壁、血が滴ったままの死に顔、らの抜き出し。別バージョンの締めが今回紹介されたが、少年鑑別所ならね研修農場の空いてる門、へ戻ってく更正システムがしっかりはたらく構成の可能性は充分にあった作。また、ナレーション通り貧困が敵で、食と愛の欠如は、母に愛されなかった、物語の中心の2少年のあり方に、メスがはいる余地はあった。親もその愛も知らず、持つべき心なく、少年刑務所に入っても、改心なく脱獄し、偶然とはいえ複数の嘗ての仲間を殺す事になっても心を痛める事のない、不具者には平気からかい暴力、女には愛をダシに巧みに近付き癖の年長1人と、14歳で犯され出来た長男は愛せないとの背景あって、本能的に拒む母の、愛を獲得しようと無理をする、勤めや収監にも素直ではある、年少のもう1人。共に呆気ない最期へ。父に捨て置かれ、非情でコンプレックスが歪み迸るイザリの世話になり、世の歪みを半ば認める少年や、ムショ帰りの友の妹で素直めも死体は普通に祖父と始末する娘、頼ってた我が子を殺される酒浸り父、歪みは補正へは向かわない、環境の絡み。
　控えめなのに前後移動の雄大感、フォローや脇人押さえ、正面芯拡張のバランスが極るカメラと構図・デクパージュ、いつになく端正正確、密度と隙なし。
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　『マカ~』。これが一方の万全と高評価作だったらしい。これもまたフィゲロア。彼は作者の狙いどおりに応えるカードをもち、過不足ない力の出し方まで空恐ろしくはある。「死者の日」を扱った作は複数本観てるがいい方。ディズニーの大作を上回り、テイスト的にはデシーカ味(『ミラノの奇蹟』らの)の、ファンシー+リアリスト振り。リアルな欲望や善意が吹き出るが、変えられぬ現実や運命は、この作者の持ち味か。自然とそれに係わる美術も、何層ものOLでの髑髏糸操り人形の垣根越えた階層間逆転も、人工粉飾や取締り権力の締まり感、らを活かすというか正確でより落ち着かし延ばすフィゲロアカメラ。終盤に至る、壮観深く広い洞窟とそこに置かれた全ての人間の命を表す無数の蝋燭配置が圧巻だ。ローめや俯瞰めが鮮やかで、小角度変も交えた組立てや場の造りもしっくり。寄る、以上に特に退くが効果的。
　かなり昔の話、貧しい木こりが、家族の食糧不足に対し、自ら完全な拒食に走ると、うわ言等で真情を見抜いた妻(名演)が、七面鳥を盗み丸ごと1人仕事中の昼飯に与えると、それを欲しがる３人が現れ、余裕ある超自然的2人には断り、言うことに隙がない貧しい1人に半分を与える。男はお礼に、自分がベッドにこっそり立つ位置で近い生死が分かる、命の水を与える。早速それは息子の危機に役立ち、その評判で集まる人々に、金持には善意を確かめ、ベッドを動かしたりして、多くの命を助けもし、富も得る。従来の医師が困り、柩を作る大工は喜びもする。家族の健康分の水を残し、ヤバい仕事から足を洗うも、噂広がり、異端審問のペテンは火あぶりへもの動き。総督から病の我が子を助ければ、と言われるがその死は動かせぬ種類。脱出も、寿命は個別に決められを操る事は、とあの助けた男=死神の、命表す蝋燭群の洞窟に連れてかる。自分の蝋燭を持ち去らんとす。…戻らぬ夫の死体を仕事場で、七面鳥残り半分と一緒に見つける妻。夫のその善良の引継ぎを誓う。










　　　直後感
■『マ』。3.982 .1/2+90. 渡辺智子、寿命個別決められを操り、善良継ぐ、
ローめ俯瞰め小変、寄る+特に退く、ベッド動かす、家族の健康分、金持ちに善意ためし隙なしから出来、総督金持ち医者大工老人、異端審問邪正、火あぶりかペテン師。ディズニーかデシーカ。
■『忘』。比嘉勢津子47.221/4.21/3、
研修農場、校長、全財産、空き門、ムショでは、母に愛されず、食と愛、貧困層敵、14犯され子、憎しか。親知らず、目前の人。
寄る退く控えめも雄大、正面カメラへ来る、Ｆ、脇人、
来る鶏犬、距離と道、スロー、死体血と甦り、奪い合い、ミルク精液、死体片そ、何処へでもやって、盗みは、殺し疑いサツも。
■『制』。推薦、婚約者卒業まで、修道女、不寛容を解くとこんなに、牢獄、神は愛、愛情と愛混同、私を愛してくれるはなかった、特別扱いに、差異をつけては、字知らずから優秀、幸せ自由、子を妊すより罪、罰、一生の、魂を救う、神は許す、俗世の愛知らず。死を活かす。酒で呑み語り過ぎ、罰して、皆語りあわぬ。
伸びやか、背景淡く書割的も不思議立体、切返しや奥図、自在以上の合った移動のフォローや回るめ寄るら一色には、俯瞰、CU、

ドイツ映画のリメイク。今回フィルセンで観たメキシコ映画6本の中では1番映画としてちゃんとしている気がする。
クローズアップのタイミングが鈴木清順バリに上手かった。男の存在が声と影だけで表現されている。こんなこともするんだメキシコ人。