けーはち

ゲームのけーはちのレビュー・感想・評価

ゲーム(1997年製作の映画)
3.5
孤独な投資家の誕生日に仕掛けられた「ゲーム」とは……「セブン」のデヴィッド・フィンチャーらしくキリスト教的胡散臭さが満載。ヨハネ福音書を引いて「盲が開かれた素晴らしい体験だ」と曰うゲーム経験者の語りは自己啓発セミナーさながら怪しげで、実に誰も信じ得ない空間に追い詰められて叩きのめされ、今ある自己をありとあらゆる方面から否定させられ、破壊された上に、有難い救済を吹き込まれ人格を再構築される洗脳の過程のようだ。劇中ゲーム主催組織CRSは「カスタマー・レクリエーション・サービス」なのだが裏には「Christ」の子音を思わせる。予想に違わず必然的だが大胆すぎるオチが全てで、そこへ向かっていくまでの多種多様なトラブルを楽しむ益体もないスリラーではあると言えばそうなのだが、驕り高ぶった資本主義の勝者マイケル・ダグラスが受難の果てに全てを捨て謙虚になって再起するその姿は、ルネサンス絵画のようで、ある種の崇高さ、カッコ良さも見える。