Masato

マネーボールのMasatoのレビュー・感想・評価

マネーボール(2011年製作の映画)
4.4

これだから野球にはロマンがある

貧乏で弱小球団だったオークランド・アスレチックスを統計で勝利へと導いたGMとその右腕の実話を描いたドラマ。

逆説で野球の魅力を語る映画。根性や情熱ではなくビジネスの観点から野球を語り、直感ではなく統計で野球を語る。普通のスポーツ映画なら主人公の対照として使われる側の物語だが、エーズが実践したセイバー・メトリクスが成功したことから、それを軸に逆説で語っていくのが面白い。それでいてこんなに野球愛を語れるとは。素晴らしい作品。

かといってビジネスと割り切って淡々と選手をトレードしたり切り捨てていくから成功したのかとか、直感ではなくデータを事細かに分析して選手を選んだから成功したのかというわけではない。どちらも正解でどちらも正解ではない。セイバー・メトリクスが正しい理論であることは事実となったが、結局なにが正解なのかはまるで分からない。だからこそ野球は奥深くてロマンがあるということを語っていて、昔野球が好きでよく見ていた頃を思い出した。

この野球の底知れぬロマンを主人公の紆余曲折の人生とも重ね合わせているのが感動的。人生自体がそうなんだけど、スポーツ選手の人生って特に不安定。スカウトの言葉で自信をつけられていざ選手になったら泣かず飛ばずで切り捨てられる。夢だの情熱だのという言葉とは裏腹に容赦無い現実も存在する。

チャンスを見誤ったと過去を引きずるビリーの成長。自分にとって正しかったことなんて考えるほうが無駄で、結局どんなに考えても、たとえみんながそれを正解だと考えていても、最終的な正解なんて誰にも分からない。だから自分の信じるものでやることをやるしかない。だから人生だって野球だって楽しいんじゃないかと思えるあのラストは良かったな。娘さんの歌が非常に印象的。

球団の経済格差や既得権益から変革を疎まれるさまなど、野球の大人の事情もふんだんに垣間見れる。

ブラピの抑えた演技すきだな。ジョナ・ヒルもフィリップ・シーモア・ホフマンもクリプラも良かった。
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