とらキチ

現代やくざ 与太者の掟のとらキチのレビュー・感想・評価

現代やくざ 与太者の掟(1969年製作の映画)
3.9
文太さんの東映移籍後の初主演作品で、従来のヤクザを美化した任侠映画ではなく、より現代的な“ワル”を主人公にした、後の「仁義なき戦い」に代表される“実録ヤクザ路線”の先駆けとなった作品。
無頼漢が暴力団組織と対決する構図で、だからこそ!な、文太さんのキャラクターが光る。また、「仁義なき戦い」以前の作品で、新宿が舞台なので、標準語を喋る文太さんが新鮮。それに当時のロケ地であった60年代後半の新宿周辺の街並の様子を見ることも出来て、資料的な価値もあると思う。
既存の任侠組織に縛られない文太さんと“義理と人情”に縛られ拘るヤクザを演じた待田京介や若山富三郎先生との対比の描写が哀愁を誘う。劇中、文太さんと待田京介が兄弟盃を交わすのだが、その時以降の互いの表情のやりとりのお芝居なんかには兄弟分以上の関係性、仄かなBLの香りが漂ってくる。そして最終決戦に向かう文太さんの夕陽のシルエットがカッコ良かった!
名優・志村喬をはじめ、若かりし日のいろんな方々が顔を出しているなか、文太さんの想い人として友情出演していた藤純子の美しさが際立っていた。
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