とらキチ

イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男のとらキチのレビュー・感想・評価

3.9
戦後冷戦下のイタリア政治を語る上で欠かせない最高権力者であり、同時にマフィアやCIAとの“公然の関係”で知られ、権力を利用して数々の犯罪に手を染めたとされる政治家、ジュリオ・アンドレオッティの実像に迫った作品で、1990年代初頭、第71代イタリア首相として7期目の内閣を発足させる日から、大統領選への立候補と落選、マフィアとの関係や汚職の疑惑で首相の座を追われ、裁判にかけられるまでを描いている。
この人は、マルコ・ベロッキオ監督作「シチリアーノ 裏切りの美学」「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」にも登場していた、まさに“闇の権力者”や“黒幕”という形容がピッタリと当てはまる人物。
物語冒頭、当時のイタリア政治に関する用語の説明から始まる親切設計。作品自体はスタイリッシュでアバンギャルドな演出や劇伴が、とても印象的。
そして肝心のジュリオ・アンドレオッティ自身については、とにかく煮ても焼いても喰えない人。エンド前に示される彼の裁判の顛末を見るにつけ、そんな感想しか出てこない。全てにおいて逃げきって、終身上院議員として活動を続け死んでいったのだから恐れ入ってしまう。だからこその“魔王”なのだと。
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