安堵霊タラコフスキー

ラヴ・ストリームスの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)
4.9
やはり素晴らしい映画というものの中には、映像表現や役者の演技を眺めているだけで多幸感に包まれる作品が確実に存在するってことを思い知らされる、ジョン・カサヴェテス晩年の傑作。

兄妹役のジョン・カサヴェテスとパートナーのジーナ・ローランズを主軸とした会話中心のドラマなので、字幕無しで物語の全容を把握するのに骨が折れるとはいえ、彼らのアンサンブルや長回しを基調とした映像空間が抜群に見応えがあるからそれだけで2時間以上ずっと堪能していられる。

他のカサヴェテス作品の大半がそうであるように、あまり楽しいとは呼べないピリっとした空気感が全体を包んでいるものの、役者や映像により齎されるその空気がある種心地良いとも思えて時折無性にこの作品に触れたくなる。

しかし改めて鑑賞すると、濱口竜介が本当にカサヴェテスからかなり影響を受けているってことがよくわかるシーンが散見され、その意味でも感慨深い。