Kuuta

ラヴ・ストリームスのKuutaのレビュー・感想・評価

ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)
4.3
終始楽しかったです。一つのシーンに感情がいくつも流れている。喜んでいたと思ったら悲しんでいる。良さげな雰囲気になった途端、台無しな発言をしてしまう。七転び八起き、感情の起伏の繰り返し。一面的に人の気持ちを描く気がさらさらないし、わかったふりもしないから観る側も興味が続く。

・私の映画の好みとして、ロジカルに映像がバシバシ決まっていく作品に偏りがちなのだけど、演技と感情の流れに身を任せ、気が付いたら当初とは全然違う場所に連れて行ってくれるカサヴェテスの作品は、固まった脳をほぐしてくれるというか、映画を見る上での良いマッサージになるなあといつも思う(劇薬じみてはいるけれど)

・姉サラ(ジーナ・ローランズ)の離婚調停。詰めてきた合意を簡単にひっくり返す、感情任せの発言。ああ始まったよという周りの空気。自分の中では考え方は一貫しているのだが、伝わらない。伝わらないことなんて自分でもわかりつつ、口に出さずにはいられない。

家を失った彼女が弟の家で自分なりに愛を尽くす。愛を注げるものを探そうとボーリング場に行ったり(ここでも1回目はストライクを出すが、2回目は失敗する)、動きのない家に動物を加えたり、即興一発芸にチャレンジしたり。プールに飛び込み、雨を浴びて去っていく。

弟ロバート(カサヴェテス)は写真に囲まれた家から出ることができない。似たもの同士の姉弟が再会し、薄暗い部屋のジュークボックスを前に踊るシーンは美しいが、弟は別の女性と飲む約束を当然優先する。

動物パートは特に楽しい。子猫とか欲しいんだけどと言って案内されたデカい犬にビビりつつ、結局気に入るくだり。サラが連れてきた男に驚いたロバートが、犬に「あいつを殺せ」と言うが無視されるくだり。

・階段の使い方が相変わらず良い。私的空間としての2階と、いろんな人が行き来する1階を繋ぐ通路、ワンクッション置く役割を果たしている。ロバートが歌手の女性を追いかけ、階段を転げ落ちる場面も良い。

・即興ゴリ押しってわけでもなく、話として成立させようというバランスも感じられて気持ちよく見られた。ただ、血を流しながら「パパ大好き」の場面はちょっとやり過ぎな作為を感じた
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