ミシンそば

ラヴ・ストリームスのミシンそばのレビュー・感想・評価

ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)
3.8
テッド・アレンとの共作で、第一稿は公開の20年前に出来てた、色々と逸話盛りだくさんな、カサヴェテスの集大成映画。
集大成であることに偽りなし、あらゆる過去作品を直近観てきた身としては、それらの要素をちょっとずつ感じると同時に、カサヴェテス本人及びローランズの老け方を如実に感じる。
(それはそれとして「アメリカの影」の劇場鑑賞は結局諦めました。いつかU-NEXTで観ます)。

愛に不器用なカサヴェテス演じるロバート、多くの女を自宅に侍らせ、元妻との間の(存在すら最近まで知らなかった)息子への接し方も間違えまくってて滑稽だ。
愛が多くて照準が定まらないのか、愛の蛇口の絞り方が分からないのか、解釈は如何様にもしようがあるが、満を持して自身で挑んだ本格的なクソ野郎役は、カサヴェテスの演技面にとっても集大成な気がする。

姉役のローランズも、過去作をさらに突き詰めたような狂気演技は、やはりカサヴェテスとともに歩んできたことを感じさせる。
肉体的にも衰弱気味なサラは、ローランズが演じてきた「こわれゆく女」の中では一番重症なんじゃないかってくらい、行動のエキセントリックさと言動の支離滅裂さが激しい。
おかしいテンションから来るあの押し付けは、元夫からも娘からも辟易されて当然だろう。

思うに「愛の潮流」とは、ロバートとサラが助けて助けたボガボガボってやってる激しい流れの事だろう。
日本語話者にはどうしても気取って聞こえる横文字だけど、要するに二人は溺れてて、藻掻いているのだ。
そんな二人にカサヴェテスが最終的に提示したのは、「そんなん知るか」的なサムシングだと自分は感じたから本当に意地が悪い。
だから、集大成であることに疑いようはないが、一番好きなカサヴェテス作品に、自分にとってはなり得なかった。