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ロゼッタのadeamのレビュー・感想・評価

ロゼッタ(1999年製作の映画)
3.5
ベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟がカンヌで一つ目のパルムドールを勝ち取った人間ドラマ。
酒浸りで身体を売る母親とトレーラーハウスで暮らす少女が理由もなく仕事をクビになるなど、理不尽で容赦ない現実の苦難に耐えながら、力強く生き抜いていく姿を描いた物語です。
目先の金や食料ではなく、定職に就くことにこだわる少女の姿からは、それが現状の暮らしから脱出するための糸口であることがひしひしと伝わり、その場しのぎの同情や優しさを跳ね除けてしまう頑固さには、単に彼女が不器用というのではなく、根本から変えなければならないという覚悟を感じさせました。
そのためには人を蹴落とすことも必要で、時折倫理観が揺らぎながらもたくましく道を切り拓く様は圧巻で、ワッフルスタンドで忙しく働いている時の満たされた表情が素晴らしかったです。
抗い難い宿命に屈しかけたラストで再び差し伸べられた手に少女がどう応えるのか、それを見せないのはリアリティを削がないことで説得力を維持する効果がある一方、メッセージとしてはずるい気もしました。
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