
「何度も、読み返される本を。」を目標に掲げ、出版活動をつづける夏葉社。 東京・吉祥寺にある会社では、島田潤一郎が編集や経理、発送作業まで一人でおこなっている。 出版の編集経験もないまま起業し、15年間この仕事を繰り返してきた。 大学時代、島田は小説コンクールで一等賞を獲り、27歳まで作家を目指すも挫折した。 意を決し就職したものの、そこでも思うようにならず、生きづらい青春期を過ごした。 だが、夏が来るたびに帰省して遊んだ、故郷・高知の従兄の死をきっかけに、人生が動きだす。 悩みのなか読んだ一編の詩にはげまされ、その詩を自分で出版し、従兄の両親に贈ろうと考えたのだ。 それが『さよならのあとで』という、夏葉社を代表する本となった。 2022年夏、島田は不登校の若者たちを積極的に雇う 「ウィー東城店」という書店の本の編集に取りかかっている。 広島の山間部にある店まで足を運び、店主や若者たちと話をし、その成果を少しずつ原稿にする毎日だ。 本を買い、読むことしかなかった20代。 本に救われた島田は、いま本と本屋と、そこに集うひとたちに恩返ししたいと考えている。