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ふたりの5つの分かれ路のtakのレビュー・感想・評価

ふたりの5つの分かれ路(2004年製作の映画)
3.5
フランソワ・オゾンのフィルモグラフィを改めて見ると、男女の恋愛がテーマの作品ってない。ストーリー上の要素として恋愛はあるけど、主題とは言い難い。この「ふたりの5つの分かれ路」は、そんなオゾン作品の中で男女の関係を真正面から描いた作品だ。だがオゾン監督が、誰もが撮るような男と女の話にするはずがない。映画は5つのパートに分かれ、いきなり離婚から始まり、出産、結婚、出会い…と遡っていくのだ。

離婚が成立した後、最後にもう一度抱き合おうとする二人。しかし、その行為はうまくいかず「やり直せないか?」のひと言も虚しく女は部屋を出ていく。
時間は遡り、ゲイである兄とその恋人が登場し、パートナーとの関係はいかにあるべきかという会話が続く。妻を裏切ったことはあるか?との問いに躊躇なく話を始める男。虚ろな眼でその話を聞く女。何故彼女は怒らない?子供も授かった夫婦なのに。
その子の出産に関するエピソードへと時間は遡る。出産を終えて、連絡も入っているのに男は病室に近づこともしない。不安なムードだけが広がる。男の行動がさらに疑問を深めていく。そして結婚当日、さらに出会いとストーリーは逆走していく。

オゾン作品では珍しく、セックスは男側の支配的な行為のような印象だし、クスッとさせるユーモアは感じられない。結末が分かった上で二人の出会いまで見るのは正直キツい。今まで観たオゾン作品の中で最も精神的に残酷な映画だし、僕は観ているのが辛かった。ラストの出会いの海辺があまりにも美しくて、その気持ちはさらに募る。

出会わなければよかったのか。人生という時間のひと時を、ただすれ違い続けてきたのか。所詮男と女は、いや、人と人はすれ違いを重ねながら生きてくもの。淡々としたムードだし、とんでもなく寂しい気持ちにさせられた。カップルの数だけ、それぞれに違う男と女の物語はある。だから面白いし、だから切ない。
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