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天と地とのtakのレビュー・感想・評価

天と地と(1990年製作の映画)
2.9
1990年邦画最大のヒット作となった「天と地と」。角川春樹自らメガホンをとり、オールスターキャスト、メディアミックスの宣伝で、当時の角川映画の勢いを象徴するような作品だった。タイトルの筆文字は強烈に印象に残っていて、タイトルを聞くだけであのハネとハライが頭に浮かんでしまう。

大作時代劇とは思えないくらいに、お話は早いテンポで進行する。個々のショットは絵になるのだけれど、時代劇特有の"間"が感じられなくて、情感に欠ける。上杉謙信の話なのに、観終わって印象に残るのは津川雅彦の武田信玄…なんでやろ。鎧の色のせいだろか。

クライマックスの川中島の合戦シーンは、確かに迫力がある。カナダで撮影したという広大な風景は、スクリーンに映えるし、両軍の鎧の色を分けた演出は分かりやすい。"赤と黒のエクスタシー"との宣伝文句が思い出される。だがこの場面、残念ながら遠景が多いのが残念なところ。広大な風景を前にして、そこをフィルムに収めることに心が傾いてしまったのか。そこで戦が行われているという、緊迫感が感じられないのだ。この数年前に黒澤明の「乱」を映画館で観ているせいか、全然別のものに思える。

されど、僕がこの映画でお気に入りなのは、小室哲哉が手がけたサントラ。当時ソロのライブでも演奏された「炎」は、ボレロのようなリズムにシンセの連打がファンファーレのように響く。主題曲は哲ちゃんの拙いボーカルのせいで(失礼)、お気に召さない方が多いと思うのだけど、僕はかなり好き。楽譜も当時手に入れた。僕はウィンドシンセ吹きなもので、雅楽のメロディ楽器ぽい音色にして演奏してみたいなぁー、と常々思っている。
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