優等生少女の心理的倒壊──第21回大阪アジアン映画祭にて。異端の台湾映画だった。特に台湾映画好きの方には是非観てほしい。裕福な家に生まれ学校では学力トップの少女・丹美。親や教師からの抑圧に耐えながら優等生を演じる彼女の心は、恋心を募らせていた年上の従兄の死によって決壊してしまう。

監督の白景瑞（パイ・ジンルイ）は、オムニバス武侠映画『大輪廻』（1983）の一編しか観たことがなかったのだが、本作『寂寞十七歳』における心理表現はカメラワーク・美術・編集は反骨心と美学を感じさせる見応えのあるものだった。60年代の台湾映画でこれほど破壊的な表現に挑戦した作品があったとは。それも大衆向けの映画で。白景瑞（パイ・ジンルイ）はイタリア国立映画実験センターで映画を学んだ経歴を持ち、本作にはその影響が多分に表れている。フェリーニやヴィスコンティというよりも、60〜70年代心理サスペンス映画が持つ荒々しい美的センスを感じる。アルジェントとかデ・パルマとか、そっち系のタッチ。

思春期の不安定な心情と押し付けられる安定に対する抵抗を描いた良作だったが、両親と教師との和解が唐突すきて無理がある気もする。親世代のメンツを立てて終わらないと大衆映画としてはリリースできなかったのかもしれない。