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お引越しのbibooのネタバレレビュー・内容・結末

お引越し(1993年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

子供の自分が感情のまましてた表情に対して「何なのその目」って言われたときの初めて見る大人の顔だったり、大人の泣き顔だったり、大人の男女の揉める様を見た時だったり、「”大人”とは」や、生々しい人間の面を初めて知ったときの感覚を思い出した。
大まかな「わるい」以外の気持ちが繊細に存在していて「軽蔑」とか「嫌悪」とか具体的なドロドロとした気持ちを初めて知ったときのような感覚。
自分が持つ感覚なんて、良いとか悪いとか、好きとか嫌いとか、美味しいとか臭いとか、磨き立てのビー玉みたいな裏側がすぐ見渡せるほどツルッツルで単純なそんなんだけだったのに。

私の父と母もケンイチとナズナのようなところがあったからなのか。少女から女性へ歩き出したときの感覚なんて私の中で表立って具体的に思い出されることなんてほとんどなかったのに、未熟でどうしようもない大人を受け止めさせられた子供の気持ちになったし、レンコの突拍子もなく感じられる行動や伴って出てくるセリフから繊細に感じ取られてしまった。
どうしようもない大人へ子供として出来る限りの反抗の末、考えあぐねて「早く大人になるから」と決意とも取れる言葉を母に言ったんだろうな。
離婚する両親とその子供の話はごまんとあるけど、こんな切なくて繊細に想像できる作品はないなと思った。こうやって人間って形成されて成長し大人になってくんだなとじんわりと、でもしっかりと感じさせてくれる。「生んでくれて、ありがとうで ばかやろう」というキャッチコピーが秀悦で、すごく染みる。

この作品でデビューした当時中1の田畑智子がすごくキュートで良い味出していて、森に裸足で入ったり琵琶湖に入ったり、一般人だった子供にとって、それはそれはものすごい過酷な撮影をさせられたんだろうなとヒシヒシと画面から伝わってくる。DVDについてた2013年のトークショーによると、3ヶ月の撮影中、撮影クルーと撮影所の近くで合宿してたらしく、お腹を壊した一回くらいしか自宅に帰らせてもらえなかったそう。メイキング映像でのクランクアップのときの一皮むけた田畑智子の目が忘れられない。

「染之助・染太郎」だったり当時のネタも多いし、録音技術なのかあんまりセリフが聞き取れないところもあって日本語字幕でもっかい見たいと思った。

どうやってやんのみたいな髪型の小学生がいたり、突然の極地的な豪雨だったり、時代を感じるパートもあるけど、機敏の表現がとにかく素晴らしく忘れられない一本になった。
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