チャップリン初のトーキー映画。現代の映画と同様に人物たちの発声が収録されて画面下部に字幕が出るようになった。2時間超えと彼の作品にしては長尺。興行的に大成功したのはただ面白いだけじゃなくて、公開された40年代当時に戦争に巻き込まれて疲弊していた人々が癒やしを求めたっていうのも背景にあるんだろうな。
ロダンの考える人の彫刻ですら片腕はナチス式敬礼をしてるのは笑った。誰が見ても分かる通りヒトラーとナチを面白おかしく演じたもので、見栄の張り合いとか各所の笑いを誘うシーンがあると同時に地球儀を弄んだり平然と射殺命令を下す姿は視聴者に恐怖心を芽生えさせるテイストに仕上がってる。もちろんナチの映画です！とは明言しておらず仮想国家トメニアとは名乗りつつも、独裁者と側近たちの名前、衣装、国旗はナチを色濃くモデルにしていて観る人が観れば画面で起こっている以上に刺さるかも。
ヒンケルと取り違えられた床屋による最後の演説シーンは圧巻。「兵士諸君！民主主義のために戦おう！」という言葉は一市民として素直に世界中の幸せを願う気持ちが込められていて、チャップリンが本作で一番伝えたかったことなんだと分かる。この数分のためだけでも観る価値はある。
