だいぶカットを割ってるのが初期作っぽくはあるが、それにしても、この台詞の少なさは只事ではなく、やはり天性の映画勘とでも呼ぶべきものが備わっている証だと思う。あとちょっと「早春」みたいな童貞映画っぽさもあるのが意外な驚き。

バスの窓に反射した街の風景、ガラス扉の格子(フレーム内フレーム)、それをさらに洗面所の鏡に映したフレーム内フレーム内フレーム、もう既にキアロスタミの特徴がはっきり出てる。

https://archive.org/details/kiarostami-abbas-experience-1973-vo
（インターネット・アーカイブからで、ペルシャ語のみ）私はペルシア語が全くわからない。言語は映画鑑賞の主たる助けだ。しかし、映像だけで判断するわけだが、キアロスタミ監督の白黒映画は魔力を持っていて、それで、理解させてくれると思う。

18歳以下のような少年が労働に携わっている。彼は孤児のようにも思えるが、親戚の家で厄介者が厄介になっているようにも思える。（字幕がないからね！）それに、写真屋で働いているようで、お茶を買ってきたり、２歳の子どもをあやして、写真を撮らせたり、階段を雑巾で拭いたりなどの雑用係をしているようだ。しかし、彼の一目惚れした写真を引きのばして立て看板の女性と入れ替えるというクリエイティビティーからボスに煙たがられるようだ。

社会の人々が、（荷物を預かってくれた洗濯屋の少年をのぞ
く）冷たく感じるが、錯覚かな。ホメイニ前のシャーの時代だから人々はもっとイキイキしていて、お互いに優しくてもいいと思うけど？こんな少年が働くような社会ではこまるが、私は当時の事情を全く知らないので、なんとも言えない。しかし、この少年が経験する数々のことが、彼の将来にどう影響を与えるのか気になる。彼がこれらを乗り越えて、良い経験として、捉えられるのか？それとも、人にされたことを、俺も子供の時そうされたんだからと言って、ぞんざいになるのか。それより先に、彼がその後どうサバイブ出来るのか。

キアロスタミの考えである、たとえば、貧しい人間と金のある人間、他にも、教養のある人間とない人間。それぞれがお互いに助け合っていこうと。この思想が貧しい少年が、裕福な少女に恋をするという形で現れていると思う。現実は厳しいのはキアロスタミは承知していて、この構想を入れていると思う。子供の未来を考えて。

IMDBを覗くと監督3作目、中編では1作目のようで、キアロスタミも70年代はズームイン/アウトを使っていたのか…と。写真屋で眠り込むのも1ショットで見せてほしいところ。
正装をして靴みがきをしてもらうも恥ずかしい思いをするのをサイレント的に語ってみせるのは中々。