ブニュエルの作品で最も映像や構図が秀でていると思える映画。
それまでもいくつかの作品で確認できたが、この作品ではカメラワークが特に黒澤明的で洗練されたものとなっていて(時折挿入される人物のカットインも黒澤っぽい)、どのシーンも見事と言わざるを得ない。
宗教に関しては皮肉的に描いたブニュエルが珍しく真摯に聖職者を描写しているのも良いし(ブニュエルらしい変態性がありつつも)、そこに滲み出るヒューマニズムもまた黒澤的。
ここにきて忘れられた人々やエル以上の洗練さを発揮して、以降名作ばかりを世に出すこととなる理由は不明だが、このブニュエルにとっての転換点とも言える傑作が黒澤明やベルイマンを敬愛したタルコフスキーや優れた映像の作品を愛するホン・サンスらがオールタイムベストに選ぶ理由はよくわかるし、自分もこの作品がブニュエルのベストだと思う。