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乱のkoyoのネタバレレビュー・内容・結末

(1985年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

『夢を見ていた…』から物語が動き出すの、黒澤明だ!!って興奮した。狂阿弥が名言残しまくっててとにかく最高だったから映画見終わったあとに家で課金してもう一周しちゃった。〈人間そのものが持っている業みたいなもの。どうしても切り離せない人間の悲劇みたいなもの〉がテーマであり、『リア王』と毛利元就の『三本の矢』の逸話から構想を練った作品。

長男にも次男にも裏切られ、切腹しようにも刀は折れるし、城が焼き払われても死に損なって、死ぬべき時に死ねずついに気が狂ってしまう秀虎に「狂った今の世で気が狂うなら気は確かだ!」と言い放つ狂阿弥。「俺は虫だ。潰されてしまう!」「潰されるもんか!惨めなやつは殺してももらえないんだよ!」のやりとりもなんというか的確で心苦しい。一世一代戦国武将を務め上げて、最後の最後で気が狂った見窄らしい老醜の姿。ラストシーンは3兄弟の中で唯一父親に慈愛を向けていて(冒頭シーンで秀虎に日除けを作ってあげる)、「いつかは争うことになる」と『三本の矢』を折った三郎とやっと再会できたのも束の間、目の前で討ち死に。「神や仏はいないのか!人間が泣き叫ぶのがそんなに面白いのか!」と叫ぶ狂阿弥に、忠臣平山丹後が諭す。「神や仏は泣いているのだ。いつの世にも繰り返すこの人間の悪行。殺し合わねば生きていけぬこの人間の愚かさを、神や仏も救う術はないのだ。」「これが人の世だ。人間は幸せよりも悲しみを、安らぎよりも苦しみを追い求めているのだ。」
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