面白かった。話自体は、ベースの「リア王」を知っていれば大方予想できる展開ではあったけれど、それでも見せるものがあった。楓の方の魔性の女っぷりや、惨憺たる戦の執拗なまでの描写、その中で気を狂わせていく秀虎の悲愴さ...それらの演出が非常に印象的だった。
特に、たくさんの人々が殺し合い、恨みばかりを募らせていく戦の虚しさ、悲惨さを見せつけた後、神や仏を呪う狂阿弥に丹後が「神や仏は泣いておられるのだ。いつの世にも繰り返す人間の悪行、殺し合わねば生きてゆけぬこの人間の愚かさは、神や仏も救う術はないのだ」というセリフがすごく良かった。ズバーンと響いた。
そして最後、目の見えない鶴丸がかつて秀虎に焼き払われた古城で一人、姉の帰りを待つ姿に、胸が締めつけられる。黒澤映画、すべらんなぁ...