KAJI77

噂の二人のKAJI77のレビュー・感想・評価

噂の二人(1961年製作の映画)
5.0
大傑作。

原題は"The Children's hour"
観終わってから元のタイトルを見るとかなり恐ろしい…

『ローマの休日』と『ベン•ハー』が独り歩きしがちなワイラー監督作品やけど、やっぱりこの人は普通に天才なんだなぁ…と思わざるを得ない。

まるで古さを感じない、とまで言うと嘘かもしれないが、テンポの良さや素人目にも推敲されたと分かる構図、何より脚本が素晴らしい。
現代ドラマを食ってかかれるクオリティ。
おまけにシャーリー•マクレーンとオードリー•ヘプバーンの共演まで堪能出来るなんて…贅沢な映画ですよ全く…
(元ネタはヘルマンの戯曲とのことですが…)

お話としては、当時はまだまだ認められていなかった同性愛者と疑われてしまい、人生がにわかに破滅してゆく2人の女教師を描いた作品。
あらすじだけだとイマイチ本作の魅力が伝わらないが、上述したようにドラマとしての展開力と構成力、観る者の全てを持っていく決定打となるようなシーンの配置などが恐ろしい程にピッタリで、完全に計算し尽くされてた。

めちゃくちゃ個人的な意見ですが、このウィリアム・ワイラー監督が同時代の他の監督に比べて傑出している点は、話の全体像の中のどこからどこまでを切り取ってスクリーンに収めれば良いのか、そしてどこをラストにすれば良いのかということについて、ある種の猟奇的なこだわりを持っていたという点だ。

この人の映画の終わらせ方って、例えば2本の直線があったとして、その2本の交わりが鋭いがために、もう2度と交わらない事を悟らせるといった感じが多い。気がする。
そういう構造の、交わり終わったその直後で画面をシャットダウンしちゃうテクニックが、この憎らしいほどに奥ゆかしい余韻を演出しているんでしょうね。

『ローマの休日』にしても、本作にしてもそう。
仮に自分がこの脚本で映画を撮るとなった時に、胸を張ってこのシーンをラストにすると言えるのか?(ラストにもって来れそうなシーンは他にもある…)
いや、僕には無理だな…なんだか降伏してしまうわね。
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