櫻イミト

噂の二人の櫻イミトのレビュー・感想・評価

噂の二人(1961年製作の映画)
4.0
「ローマの休日」(1953)のウイリアム・ワイラー監督による女性同性愛を扱った作品。主演はオードリー・ヘプバーンとシャーリー・マクレーン。なお「ティファニーで朝食を」は同年の作品。

※本作の公開に伴ってワイラー監督らはアメリカ映画協会の規制「性的倒錯の禁止」に抗議。直後の1961年に規則が改正され本作が公開された。

17歳のときから親友同士のカレン(ヘプバーン)とマーサ(マクレーン)は、今では共同で女子寄宿学校を経営しようやく軌道にのっていた。カレンにはジョーという恋人がおり婚約中。そんな中、意地悪な生徒メアリーが、叱られた腹いせにカレンとマーサが同性愛関係と嘘の噂を流し、深刻な事態に陥ってしまう。。。

想像以上に衝撃的な物語だった。

序盤から名女優二人の共演に惹きつけられる。加えて嘘つきの子供メアリーの憎らしい演技が際立っていて、子供スリラー「悪い種子」(1956)を思い出した。本作の原作は「子供の時間」という戯曲とのことで、同ジャンルな側面もあるのだと思う。しかし本旨は社会派の作品であり、二人の悲劇を通して当時の同性愛に対する残酷な不寛容がまざまざと描かれていた。

終盤のクライマックスは、演出・映像とも張り詰めた緊張感が途切れることなく、ヘプバーンとマクレーンそれぞれの表情からは言葉にならない痛切な心情が伝わってきた。善良に生きていても、同性愛の嫌疑で社会的抹殺される現実と当事者の孤独。様々なことを改めて考えさせられ、余韻が残る一本だった。

解説によると、裁判のシーンは撮影済みだったが編集でカットされたとのこと。あったほうが良かったと思うし、もしもフィルムが残っていたならぜひ観てみたい。

※本作はワイラー監督「この三人」(1936)の25年後のセルフリメイク。マーサの叔母を演じたミリアム・ホプキンスは、同作でマーサを演じていた。
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