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噂の二人のmaverickのレビュー・感想・評価

噂の二人(1961年製作の映画)
4.2
1961年のアメリカ映画。オードリー・ヘプバーンと、シャーリー・マクレーンの共演作。監督は『ローマの休日』『ベン・ハー』等が代表作で、アカデミー監督賞ノミネート12回という前人未到の記録を持つ巨匠ウィリアム・ワイラー。


オードリー・ヘプバーンと、シャーリー・マクレーンの共演というだけでも大いに魅力的。ヘプバーンは美しいだけでなく、凛とした雰囲気で力強さも感じさせる。マクレーンはさすがの貫禄。当時としては非常に難しい役柄であるにも関わらず、自然体で違和感が全くないのが素晴らしい。この二人に加え、男前なジェームズ・ガーナーとの3人の物語で前半は進んでゆく。古き良きハリウッドの恋愛映画という感じ。ヘプバーンと、ガーナーの恋愛模様にうっとりする。

前半こそ軽めなクラシック映画という感じだが、そこからがらりと雰囲気を変えて物語は一気に重みを増す。子供のいたずらが、その人の一生を狂わせることもある。噂を平然と信じる大人たちの愚かさ。やるせなさや怒りも沸いて来るが、これが人間というものであろう。当時はこういった事例も少なく、差別の対象であったことがよく分かる。こうも考えさせられる作品であることに驚いた。

意欲的な作風であるのはもちろん、人間の複雑な心理状況も描いてある点が見事だ。感情が一辺倒ではないのが良い。善と悪の狭間で揺れ動く葛藤がとてもリアルに感じられた。悪事を働いた女の子の祖母であるアメリア・ティルフォード役のフェイ・べインターは、本作でアカデミー賞助演女優賞にノミネートしている。彼女の演技はその最たるもので素晴らしかった。憎たらしい役柄ではあるが、その演技には圧倒させられる。この時代特有の演技臭い演技も本作には見受けられるが、彼女の演技にはそれがなかった。


ラストはずしりと重い。本作は、レズビアンを取り上げた作品としてはハリウッドで最初の映画であるとのこと。こういう作品が時代を切り開くきっかけに繋がる。今は多様化も社会に受け入れられるようになり、そのことは大きな進展である。その一方で、噂好きな人間の本質というものは今も変わらない。そのことの危険性を鑑みるに最適な作品である。想像以上に良作であった。満足。
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