Eike

ディセントのEikeのレビュー・感想・評価

ディセント(2005年製作の映画)
3.8
2000年代以降のホラー映画を代表する一本。

舞台はアメリカのアパラチア山中の地下洞窟ですがイギリス映画ということもあって米製ホラーとはテイストがかなり異なるのが興味深い。
監督のニール・マーシャルと言えば2002年の「ドッグ・ソルジャー」ではユーモアとホラーのバランスのとり方で非凡なところを見せておりましたが本作では打って変わってユーモアを排した心理サスペンスとモンスターホラーを徹底したシリアスなタッチで描くことに挑戦しており、さらに注目を集めました。

悲痛な事故で夫と幼い息子を一度に亡くした女性、サラを励ますために友人たちが計画したケービング旅行。
そのメンバーの中心は親友のジュノ。
女性だけの友人グループでのアドベンチャーはしかし落石事故で様相が一変。
出口を失った一行は別の脱出口を求めて洞窟の奥深くに進むのですがそこに待ち受けていたのは想像を絶する地獄だった。

と、ここからが本格的なホラーのスタートなのだが、ここまででほぼ半分。
つまりホラー映画になるのはほぼ半ば過ぎてからなのです。
このペース配分はアメリカ映画ではなかなか許されない展開でしょう。
しかも彼女たちを襲う恐怖の「正体」も真面目に考えると怒るか笑うかどちらかといった代物。
しかし前半から女優陣のかなり本気なケービングシーンと洞窟の中と言う異空間の不気味さをきっちりと見せてくれているので意外とスムーズに展開を受け入れられます。

それとそこまで伏線として描かれてきた人間関係による心理サスペンスが後半の怒涛のアクション&バイオレンスの中で突出して来るあたりも巧い。
そしていざ「脅威の存在」が出現してからはほぼノンストップで一気にバイオレンス・サスペンスのつるべ打ちでラストまで息つく間もありません。
これはお見事。
ハリウッド製のホラー映画の多くがどこかヌルい「お約束」のお披露目会の様なパターン化に安住しつつある中で今作のようにバカバカしくともおシリアスに恐怖を描くアプローチをとるような冒険する気概をもっと評価すべきだと思います。
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