怪物よりも恐ろしい"何か"
ポン・ジュノ監督が手がけた、ただのモンスター映画ではない異色のヒューマンドラマ。作中に登場する謎のモンスターは環境汚染や権力の欺瞞、そして無力な市民の苦悩を映し出す存在として機能しています。社会風刺映画としての役割が完璧です。
物語の核となるのは、怪物に娘をさらわれた冴えない父親カンドゥと、その家族の奮闘。決して英雄的な存在ではなく、むしろ社会の底辺にいる不器用な人々。しかし、彼らの絆はどんな国家権力よりも強く、どんなモンスターよりも生々しい。ポン・ジュノ監督はこの家族の不完全さを、時にユーモラスに、時に痛烈に描き出し、観る者の共感を引き出しています。
さらに、政府やメディアの対応も痛烈に風刺。怪物の出現をウイルス感染と結びつけ、無意味な検疫措置を強行する政府。パニックを煽る報道機関。そして、真相を知る者たちが無力感に打ちひしがれる様は、ポン・ジュノ監督ならではのブラックユーモアと社会批評の融合が生む結果。これらのテーマ性はポン・ジュノ作品ならではのものですね。
程よいスリルとユーモア、そして社会風刺が絶妙なバランスが見応えある本作。モンスター映画のフォーマットを借りながらも、権力に翻弄される市井の人々の悲哀を描いた社会派ドラマ。「面白い」の一言が口から出てきます。
2025.3.23 初鑑賞