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グエムル -漢江の怪物-のtaatタートのレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
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めちゃくちゃ面白かった。
えなんで評価低いの...

VFXのクオリティが高く、グエムルの質感が本当に気持ち悪くて怖かった。
また奇形のデザインも良く、突然変異した感じがよく表現されている。

人間の水質汚染によって怪物が生まれるというのは『ゴジラ』然りお決まりだが、ポン・ジュノの手にかかると社会問題との接近に妙なリアリティを感じる。

終盤の橋の下の場面ではデモ民衆との遭遇で、より一層物語としての迫力に説得力があった。

あの画面のパワーは相米慎二の『お引越し』のラストも想起させる。


『パラサイト』でも顕著だったが、
とにかく水のモチーフとそれに関わる上下関係のメタファーが本作はかなりはっきり表出されている。

とにかく雨が降りっぱなしで、「水は下の方へ流れる」と言わんばかりに主人公たちや娘の居る下水道に降り注ぐ。

また煙や霧のモチーフも頻繁に登場し、事実を覆い隠さんと高く立ち上る消毒剤が印象的だ。

ラストでソン・ガンホに抱き抱えられた少年が上を見上げても空が見えないという演出なんていつ思い付くんだ。すごい。



オキシジェン・デストロイヤーみたいな兵器を投下する機械が、グエムルの初登場時の形態と似ていて、わざとやってるだろうなと思う。

ポン・ジュノはとにかくモチーフやメタファーの鬼だ。
読み解きがいがあって楽しいんだが、よくもまあ広げた風呂敷をきちんと畳めるものだ。



最後の展開についてだが、社会的弱者としての主人公らと人間の被害者としてのグエムルがお互いに殺し合う。

ポン・ジュノの作品には本当の悪はいつも成敗されず、表層的な争いが揉みくちゃになりながら幕を閉じる。

それでいてどこかハッピーエンドみたいな見せ方をするのがツボなのだが、現実の社会をよく表しているのかもしれない。



作品の着想には、米軍による漢江への毒物放流疑惑がある。
https://www.thecinema.jp/article/734
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