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プラトーンのmitakosamaのレビュー・感想・評価

プラトーン(1986年製作の映画)
4.5
オリバーストーンの最高傑作。ベトナム戦争をこれほどまでに生々しく描くことで人間の醜悪さを表現した。こんな作品はそうはあるまい。

チャーリーシーンが良家のお坊ちゃんなのに志願兵となったクリスを演じる。ベトナムに送られるのが低所得者や少数民族ばかりな事に憤り、社会勉強の感覚で戦場に来てしまう。

着任早々、大量の死体袋と負傷兵に出くわす不穏な始まり!もうこの冒頭の禍々しさから、主人公のその後の受難が予見できる!オープニングから素晴らしい。

ジャングルのむせ返るような湿度の高さ、土の臭い、沼の臭さ、人間に優しくない自然の凶悪な臭いがスクリーンからあふれ出ている。
道なき道を進軍するその姿には、戦争のロマンやヒロイズムなどは微塵もない。

そんな中、小隊長バーンズ(トムベレンジャー)と班長のエリアス(ウィレムデフォー)が対立していく。まず注目はデフォーだ。今や性格俳優としてクセの強い役どころが多い氏だが、今作のエリアスは実に格好良い。だがベトナムの戦地には不釣り合いな格好良さだ。
米軍の敗戦を確信し、アメリカの傲慢さにはいずれ罰が下ると言いはなつ米兵の横暴にも毅然と立ち向かう。
横暴な米兵の象徴がバーンズだ。村に銃器があれば村ごと焼いて皆殺しにしたら良いと考える。この映画では悪役だが、実は戦場では至極真っ当だとも言える。そもそも戦場がマトモじゃ無いのだから。

除隊までの日数を指折り数えて、その日の戦いを生き抜く。そこには戦争を理由づける正義などは無い。クリスも戦場の非常識に麻痺してしまい、正義感が日に日に失せていく。
決定的なのが、バーンズが戦闘のドサクサでエリアスを殺すことだ。エリアスのあのシーンね。
これを機にお婆ちゃんに当てた手紙も書かなくなる。

そしてクライマックスの戦闘で多くの戦死者を出し、生き残ったクリスは瀕死のバーンズを射殺する。ここでクリスの倫理観が完全に欠落し闇墜ちしたことが判る。

主人公であるクリスに赤いバンダナを巻かせたのも上手い表現だ。シンプルにキャラの見分けがつくし、バンダナの持つチャラさに、彼のお坊ちゃんだった立ち位置が上手く表現されている。
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