エンポリオ

ATOMのエンポリオのネタバレレビュー・内容・結末

ATOM(2009年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

手塚治虫の名作鉄腕アトムを映像化したアニメーション映画。
原作アトムとは異なる設定や展開がほとんどであるため原作に沿ったモノを期待するのではなく一つの独立した物語として鑑賞するべき作品。
ATOMでは物語というメインに社会問題などの要素がが付け合わされているのではなく物語と社会問題という二つの要素が一つの容器の中で上手く混ぜ合わされているように感じた。物語は物語として一貫したストーリー性を保持しているがその部分として現代への警鐘が欠かすことの出来ない要素として存在していた。登場人物に感情移入することで胸が高鳴ったり悲しくなったりするだけでなく生きていく上で私たちが忘れてはならいことをそっと教えてくれるこのATOMのような作品の作りはまさに手塚治虫の真骨頂であり作品が作られる場所や言語が違えどその色が薄れないことに感動を覚えた。
我先にと進む科学技術の発展とその濫用により空に浮かぶ富裕層の島とゴミにまみれた地上に隔離された世界。使うモノも口にするモノも大量に作られては大量に捨てられる現代社会の様相を人間が生活をより良くするために作り出したロボットに置き換えて描かれていた。ピースキーパーを相手に内には心を通わせ感情が働いているドローンを使い捨てで向かわせていくシーンは人を人とも思わせない戦争における兵士を暗示しているように思えた。
子供にも分かるようにと明らかに言動が怪しくなっていく地上の住人ハムエッグだが、登場から大きく愛を唱うばかりで人民を手玉に取り騙そうとするような為政者を思い起こさせた。
全世代に向けられた一つの映画として最後まで飽きることのない物語でありつつも観る者へのメッセージを忘れない素敵な作品だと思ったが余りにも取って付けの感があるラストシーンだけは残念だった。
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