ジミーT

プリンス・オブ・シティのジミーTのレビュー・感想・評価

プリンス・オブ・シティ(1981年製作の映画)
5.0
追悼 トリート・ウィリアムズ。追悼 あの頃の俺!

「バニシング・ポイント」(71年)を観た時、「これは俺のためだけに作られた映画だ。」と思ったものです。しかしこの「プリンス・オブ・シティ」を観た時は「げっ!これは俺だ。」

同僚付き合いは保ちたい。上からの依頼は断れない。社会正義みたいなのも理由にしている。上にも下にも右にも左にも悪く思われたくない。だけど何となく正しいことはしたい優柔不断。結果、流れるままに同僚を売って、悩みながらいわゆる「負のスパイラル」。保身。最後に待っていたものは何でしょう。何でもありません。十字砲火を浴びて散華するカッコよさでもなければ、明日に向かって歩き始める姿でもない。それなりに安定した地位を得る。しかし心の中は・・・。全て自分が悪い。
ラスト・ショット。主人公のアップは、まさに鏡を見ているようで正視に耐えませんでした。

ニューヨークが舞台だからといって、都会的でオシャレな展開があるわけではありません。刑事物だからといって、苛烈なアクションがあるわけでもありません。地味な地味なドラマが168分続きます。だけど目が離せない!
くそ真面目派堅物親爺シドニー・ルメット監督がその剛腕ぶりを見せつけてくれる超傑作としか言いようがなく、スコア5.0でも0.0でもどうでもいいです。

この映画でトリート・ウィリアムズ演ずるダニー・チエロという男は私にとって絶対に忘れられないヒーローとなりました。ただしそれは「英雄」としてのヒーローではなく、「主人公」という意味でのヒーローです。

追悼 トリート・ウィリアムズ
追悼 あの頃の俺。だけど俺は何も変わらぬままあの頃と同じように優柔不断に生きています。
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