もとまち

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女のもとまちのレビュー・感想・評価

4.0
迫りくる軍靴の音。画面上を踊り狂う「戦争!」のテロップ。ファシズムのパワーがイタリア全土に波及していく光景を狂熱的なテンションの演出で描いていて、その圧のエグさに只々ド肝抜かれる。撮影と照明がノワールチックなパッキパキの陰影で終始ヤバい。ジョヴァンナ・メッツォジョルノの半面を暗闇の中に浮かび上がらせるショットの見事な美しさ。どこまで悲劇的な状況に陥ったとしても、獣のように獰猛な彼女の眼差しが揺らぐことは決してない。逆にムッソリーニは自身の権威を強めれば強めるほど肉体性が取り払われ、やがてはフィルムや彫像などに抽象化されて画面に登場する。記録映像として姿を表した「彼」に対し、観客が全員起立して敬礼するシーンの異様さが恐ろしい。
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