安堵霊タラコフスキー

カストラートの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

カストラート(1994年製作の映画)
3.6
カストラートの再現として男が女顔負けの歌声を出すシーンは、神秘的でありながら思った以上に不気味でもあり、人類史における禁忌を目の当たりにした気分で戦慄した。

それにしてもこの映画でのカストラートの歌声、どうやら男性と女性の声をサンプリングして再現したらしいが、技術の進歩によって実現できたこの試みには素直に感心したし、実際その歌声で彩られたオペラの数々には複雑な気持ちになりながらも聴き入ってしまった。

それ以外の点は兄弟の苦悩とかを中心にしたドラマが主なもので心にそこまで響かなかったけど、あのカストラートを再現した歌声は偽物ながらも何度も聴きたくなる魅力が備わっていた。

でもどうせならオペラのシーン8割で残りのドラマ2割程度の割合でやってほしかったとつい思ってしまったけれど、これだとアンナ・マグダレーナ・バッハの日記みたいな構成になって絶対一般受けしなかったろうからそこはしょうがなかったか。(というかこんな極端なことを思ってしまう自分は芸術映画に毒されてしまったのだろうか)