
稽古場は怒号とともに修羅場と化し、気がつけば、心からあこがれていたはずの演出家・柳本清を力任せに何度も何度も殴っていた。 元舞台俳優の湯浅公彦は、そんな制御できない暴力的な“もう一人の自分”に悩みながら、今は探偵の仕事をしている。 ある日、同じようにパワハラを受けていた高山から、「あいつは多重人格者に違いないから、その証拠をつかんでくれ」と頼まれる。まさかという思いが強かった。しかし、調べてみると、そこには5年前とは別人のように変貌した柳本がいた。戸惑う公彦の脳裏に再び高山のあの言葉がこだまする——。
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