都部

サザエさんの都部のレビュー・感想・評価

サザエさん(1956年製作の映画)
3.2
人気歌手江利チエミを主人公である磯野サザエに迎えた本作は、お馴染みの家庭内喜劇を展開しながらも長編映画の緩急としてミュージカル要素を兼ね備えており、その多くが妄想の中で展開されるものであるから表現力豊かな歌唱が物語に豊かさを与えている。

断片的なエピソードの繋ぎ方も違和感がなく、澱みなく進行していくサザエの愉快な就職譚を中心にノリスケのロマンスやマスオとの出会いを語る如才なさは実写映画としてよく出来ている。またサザエさんの家庭内の関係を土台としたコメディパートの画面構築もパリッと描が決まっていて、撮り方という意味でも学ぶべき点の多い作品だった。

経済発展最中の豊かな日本の様子が描写される中、終盤迎えるクリスマスで磯野家が卓を囲んで歌を歌い合うシーンは伝統的日本文化のいと美しき家庭の姿そのもので非常に良い。背景で降り注ぐ雪をしっかりと画面の中に入れて、続々と展開される歌唱が団欒の雰囲気を形作る この情緒感は時代特有のそれである。白黒だからこその味。

しかしクリスマスプレゼントにあのブローチはセンスが……。
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