マヒロ

ロッキーのマヒロのレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
5.0
身も蓋もないことを言うようだけど、いくら必死で足掻いても越えられない壁って絶対にあって、駄目なもんはとことん駄目だなと思う時がある。成功を収めるためには努力だけじゃなくて、生まれ持ったものとか運とかが絶対に必要なのだ。

…と、クズ特有の思考だった僕だけど、この映画のロッキーのあるセリフには心打たれた。

絶対的な王者であるアポロとの対決前夜、恋人のエイドリアンに明日の試合は勝てないだろう、と語りかけるロッキー。あんなに練習したのに、と問いかけるエイドリアンに対してロッキーは「負けたってどうってことない。脳天が割れてもいい。世界チャンピオンを相手にして最後のゴングが鳴ってもまだ立っていられたら、俺がごろつきじゃないってことを証明できるんだ」と言う。
そして試合終了後、宣言通り最後まで立ち上がり続けたロッキーは、判定の声もコメントを求める記者の声も聴かずに、ひたすらエイドリアンの名を呼び続ける! 彼にとっては勝ち負けも世間の目も関係なくて、ただ愛する人と会いたい、会って堕落した人生にケリつけてやったということを分かち合いたい、ただそれだけだったのだ。
要するに、人生において重要なのは”成功する”ということはなく、”自分が納得するまで足掻き続ける”ことなのだと。他人から見たら敗北でも、自分の中で勝利していればそれでよいのだと。どうせ出来ないしな、といじけていた僕にとってはもう泣けてしょうがなかった。当時のスタローンがロッキーと似たような境遇にあって、そんな彼が自分で脚本を書いたっていうのもまた深いんだよなぁ。


そういう熱い部分だけでなく、ロッキーとエイドリアンの恋愛模様も実にいじらしくて良いんだな。
ロッキーは家に帰ったらまずやることといえばペットの亀さんに話しかけることで、外では普段無口なのにべらべらしゃべりだしたと思ったら近所の子供にお説教という絵にかいたようなボンクラ青年で、エイドリアンも兄以外の男の人とは目も合わせられないようなこれまた童貞に好まれがちな絵にかいたようなボンクラ女性。スポ根ものだからもっとガツガツしてるのかと思ってたので、ここが一番意外だったなぁ。

まぁとにかく、世のボンクラ男子どもは必見の映画には違いない! 「有名シリーズだから」って理由でちょっと敬遠してた自分がバカでした。
(2014.88)
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