マヒロ

カード・カウンターのマヒロのレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
4.0
(2024.45)
刑務所から出所後、腕利のギャンブラーとしてカジノを渡り歩くウィリアム・テル(オスカー・アイザック)は、ある日軍時代の上官であり自身が収監される原因となったジョン・ゴード(ウィレム・デフォー)の姿を見かける。また、ゴードに恨みを持つ青年カーク(タイ・シェリダン)と出会い、復讐を持ちかけられたことから運命が変わっていく……というお話。

ポール・シュレイダー監督作品は『ドミニオン』『魂のゆくえ』と観てきたので、これが初めて宗教が大きく絡まない作品。ただ、過去にトラウマを抱える男がグジグジ悩んだ挙句最後に暴力的な結末を迎えるという展開はほぼ同じだった。よく考えたら脚本担当の『タクシードライバー』とか『ローリングサンダー』もそうだし、もうシュレイダー監督はこのテーマを延々とやり続けることに生涯を賭けているということなのかな。
話の大軸は同じとは言え好みの大小はあるんだけど、今作はなかなか好きな方だった。中でも主演のオスカー・アイザックの魅力が存分に発揮されているのが良いところで、ロバート・ミッチャムのような気だるげな目元と、内に秘めた狂気を感じさせる佇まいが格好いい。こんなに画面映えする役者なのに、大作映画ではいまいちパッとしない役ばかり任されがちなのがもったいないなと思ってしまうほど。ドラマだけど『ムーンナイト』くらい彼をフィーチャーした作品がもっとあってもいいのに。

映像的な遊び心が垣間見えるのが面白く、モノクロかと思うくらい色彩の薄い刑務所の異様さや、ウィリアムのトラウマの元である収容所の場面のやり過ぎなくらい歪んだカメラなど、脳裏にこびりつくような場面がいくつもあった。
映画全体は硬派なようで、ウィリアムの恋愛描写については途端にいじらしい感じになってしまうのも良くて、イルミネーションの中でのデートとか、ガラス越しに手を合わせるところとか、学生カップルみたいな初々しさでちょっと笑ってしまった。あえてそういう風に撮ってるのか、おじいさんなりの精一杯の恋愛演出なのか……。
語り口はドライながらも、こういった映像や演出でのキャッチーさが楽しく親しみやすい一本だった。
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