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無言歌のmimocyanのレビュー・感想・評価

無言歌(2010年製作の映画)
3.6
1960年、中国で起こった反右派闘争。政治犯となったものたちが「労働改造」されるために送られた甘粛省の砂漠にある収容所が舞台。

荒涼とした砂漠の大地。聞こえてくるのは砂嵐の音だけ。
命の躍動を剥ぎ取られた収容者たちが、それでも僅かに残った生にすがり、砂にまみれながら蠢く姿が描かれる。
台詞の量が絞られ、劇映画でありながらドキュメンタリーのような生々しさが満ちる。余計な音、起伏がまるでない。ただただ、その場所で起きていた事実が淡々と綴られていく。

無言の歌は多くを語らない。
声の大きい者が勝つ。そんな今にあるからこそ、尚更声なき声が響いてくる。
聞こえてくるのを待つだけじゃいけない。こちらから耳を澄まし、目を開かなければ、過去はいつまでも口をつぐみ、大地の下で沈黙を歌い続ける。
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