ヒノモト

カルネのヒノモトのレビュー・感想・評価

カルネ(1994年製作の映画)
4.3
本編40分のギャスパー・ノエ初監督作品。
公開当時1回だけ観て以来、無性に観たくなってDVDを中古購入して久しぶりの鑑賞。

今作を当時観ていたからこそ、迷走している現在でもギャスパー・ノエ監督作品を観続けていると再確認した初期衝動にあふれた作品でした。

後に続編となる「カノン」を含めてしまうと中年男性の妄想と暴走が紙一重に感じてしまうのですが、「カルネ」単体で観ると、娘に対するストレート過ぎる愛情と、それ以外の人たちへの軽蔑があからさまに描かれていて、タイトルの意味する馬肉よりも肉体から起因するところが大きいと感じました。

食肉としての馬肉を処理するだけの日常と勘違いから逆上していく暴力の矛先の向け方はさすがに急展開だし、偏見や差別も甚だしいのですが、日常の歯車が狂っていく瞬間の描写としては鮮やかで、無駄が全くないです。

「カノン」以降で強調されすぎる注意喚起などは控えめでありながら、容赦ない表現の自由さは作家性が許容されている時代を感じ、初見で観る方とは違う印象かもしれませんが、どこまでを映像として映して、どこからを脳内で想像させるかというバランス感が、おそらく予算的制約がある中で、存分に発揮されているし、シーンのつなぎにしても、シネマスコープを存分に利用したカットの数々が美しすぎます。

男性脳的脳内ドーパミンが出まくっている世界観で女性蔑視にあふれすぎていて、1ミクロンもおすすめできないですが、ドラッグなど映像的快楽表現に偏ってきている近年のギャスパー・ノエ監督作品よりもストレートで技巧的な表現になっていて、さらに過激な表現の後にある終盤の優しいカメラの目線が救いがって、原点にして最高だと思いました。
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