スズランテープ

カルネのスズランテープのレビュー・感想・評価

カルネ(1994年製作の映画)
3.5
おもしれー。
ギャスパー・ノエの初期短編。荒削りでチープな演出も目立つが、求心力のある画面が続く一作。私が読んだ論文では、冒頭の屠殺シーンは終盤の性交シーンの主人公の怪物性を際立たせていると論じていたが、私は作品全体の反出生的なテーマをより強調しているように感じた。屠殺からステーキを食する妊娠中の妻、そして出産の見事なイメージの構築は「生」の根本に存在する穢れや厭さを想起せずにはいられない。

切断を意識した編集や音楽などギャスパー・ノエの演出の堅実さがいい。ただ暴力シーンを切断にしなかったのは少し謎だったかも。

カミソリで頬を切る冷たさ。コーヒー屋の客たち、そして娘に肉欲を覚える主人公、生きることに付き纏うどうしようもなさの描写がいい。「血と肉を分けた娘」、「9秒間のオーガズムで子供は60年間苦労する」と言ったセリフも心を抉る鋭利さがある。

低予算ながらテーマに沿った演出と脚本。
ノエの作品の中なら一番好き。面白さだと『climax』とかになるのかな。『アレックス』は見返したいですね。
スズランテープ

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